「あれ、今日は一人なの?」

「仲間はみんな用事があってさー。おれ一人でもできる依頼って無いかな」

「うーん、だったらこれなんてどうかな?」

「……『猫を探して下さい』? なんだこれ。おれは昔から冒険ロマンに憧れてたんだが、冒険者への依頼ってもっとこう、魔物退治とか、遺跡調査とか、失われた財宝を探して下さいとか、そういうんじゃないのか?」

「そう言われても、君みたいな素人向けの依頼は今のところこれしかないんだよ」

「あ、言っとくがな! 『素人が自分の実力もわからないくせに、なんとなくかっこよさげな冒険したがってる』ってんじゃないぞ!? せっかく冒険者になったのに、受けられるのが猫探しってのはつまんなそうだってだけでっ」

「じゃあ止める? 気乗りしない依頼を強制したりしないよ。またおいで」

「……いや、依頼は受ける。ロマンも何も無い話だけど、そろそろお金が無くなりそうなんだ……。うう、装備を整えるどころか生活費もカツカツなんて。
 ……一応訊くけど、『猫』ってのは普通の猫だよな? そういう名前の別な生き物じゃないよな? ついでに『自分ちの飼い猫だと思っていたら本宅は他人の家だった』みたいなオチも無いよな?」

「あははー、無い無い。
 さあ、依頼人さんはあっちの卓にいるから、詳しい話は直接やりとりしてね」

「任せろ。これでも村じゃ動物になつかれる方だったんだ」

「頑張れー。これを成功させて君の望む英雄伝承に繋げて行けばいいんじゃないかな」

「……というと?」

「猫探しが発端となってなし崩し的に世界の存亡を賭けた闘いが始まるとか」

「こっ、怖いこと言うな!!」