『もらい泣き』
冲方丁


冲方さんの著作は以前からこのブログでも感想を書いたり紹介したり再開の喜びを綴ってきました。
しかしこの作品はそれらと大きく異なり、実話を元にしたフィクションです。実話にした最大の理由は、プライバシー保護だそうで。また、本質を絞り、より分かりやすく伝えるためという理由もあるそうです。

テーマは感情との和解。「怒り」ではなく「泣き」。あるいは普遍的なものを書こうとしたのかもしれません。
著者が募集したエピソードを分解し、時には結合し、再構築した短編集です。
雑誌連載の時期が時期のため、震災がらみの話が多いのは仕方がないです。

「泣き」がテーマだからって、泣こうと思って読むよりも、または泣くまいと思って読むよりも、もたらされたものをもたらされたままに受け止めればいいんじゃないでしょうか。波長が合えば、それまで。合わなくてもそれはそれで。

私の中に特に響いたのは
「地球生まれのあなたへ」
震災と夫婦のお話。
満たされた、溢れた、という感情を、私はまだ言語化することが出来ません。