冲方丁『はなとゆめ』読了

冲方丁
『はなとゆめ』


最初の印象は、「著者らしくない作品」。
冲方さんの小説は『シュピーゲル』シリーズから入って『天地明察』『光圀伝』と読んでいます。だから、著者の味や、よく使うフレーズなんかもちょっとは把握して来ているわけですが。
今作は、らしくない。

何故そう感じたかを考えました。
まず、清少納言の視点で書かれているため、文体が現代語訳された古典の様に感じたこと。だから話が淡々と進むと感じたこと。
また、この時代の女性は政治に関われなかったため、他の作品の登場人物はむしろ積極的に関わっていた、あるいは関わらざる得なかった政治というものを、外側から眺めるだけになっていたこと。

しかし「ゆいいつのすべ」等の著者らしさを感じる言い回しは健在。

それを思い返して気付きました。
雅やかな世界の中で、清少納言も戦っていたのではないでしょうか。あくまでもたおやかに。
激しさは無いから、著者らしくないと思ってしまったけれども。

清少納言は、中宮様に見出だされ、彼女のために働きます。自身の長所たる機転、それを引き出すすべは、中宮様が導いてくれました。
そうして、清少納言の機転は時に、中宮様の助けとなったこと。中宮様の助けとなったということは、中宮様と敵対関係のある者達の不利益になったということ。
清少納言は政治と無関係であり、身分の力も持ちません。しかしその言動は、蝶の羽ばたきの様に微力ながら、確かに嵐を起こしたと言えるのではないでしょうか。嵐は大袈裟かもしれませんが。

この作品もまた、現状と戦う者のお話なのです。道長様との対立のあたりは特にそう思いました。
だから、一見らしくなくても、根底は他作品と繋がっている印象を抱きました。

唐突な主張

手垢にまみれたベタベタでテンプレートなシチュエーションで百合をやるのが好きです。

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