ここに来た日、はじめて食卓を囲んだ時のこと。
「…あたしたちがみなさんといっしょにごはん食べてもいいんですか?」
フランさんはおずおずと口を開きました。
前のお屋敷では、主人と使用人たちの食事の場所と時間は別で、一緒に食べるなんて考えられないことだったのです。
しかし、ヘリオスさんはさして気にした風もなく答えました。
「無論。お前もわん太も単なる使用人ではなく、俺達の家族も同然なのだから」
フランさんはぽかんと口を開けました。
「かぞく…」
それは彼女にとって耳慣れない言葉だったからです。
「そう、家族。『食事は家族全員が揃ってから』。それがこの家の決まり事だ」
そこまで言ってから、ヘリオスさんは照れを隠すように咳払いをひとつ。
「…それにな、食事は大人数の方でする方が美味いぞ」
その時のヘリオスさんの顔を思い出し、フランさんはくつくつ笑いました。
ヘリオスさんは思わず半眼になり、サラダをひたすらトーストに挟む手を止め、
「…何だお前。人を見上げて失礼な」
「あ、いえ別に!」
フランさんはぶんばぶんばと首を振りますが、怪しさはいまいち誤魔化せていませんよ?
「うふふ。何だか二人ともすっかり仲良しさんですわね」
(まったくだ)
ラザさんはしっぽを振って頷きました。