『抱き枕と抱き枕』


やたら暑くて夜中に目が覚めた
意識が覚醒するにつれ
じんわりと汗をかき、体にはりつくシャツと
首元にまわされた何かが気に掛かった

「…ー…重い…」

首にまわされた何かに視線を向けると、そこにあるのは腕だった
その腕が誰のものか分かっている

今自分の後ろで眠っているアクセルだ
マールーシャはため息をついた

「…おい…暑苦しい…腕をどけてくれないか。」

「……」

声をかけたものの何の返事もなく、後ろからは微かに寝息が聞こえる

「…はぁ…」

仕方がない、そう心の中で呟いて
汗もかいているし、これでは眠れないとベッドからおりようとすると
不意に首にまわされた腕に力が込められた

「ぐっ…」

首に力がこめられたせいで喉を圧迫され一瞬息がつまる
ベッドからおりる事を失敗したマールーシャは
後ろにいる人物の腹を肘でどつく

「っ…!?…いって……何すんだよ…。」


後ろから怒りを含んだ声で言われたのを無視してさっさとおりようと上半身を起こすと、腕をギリギリと力強くつかまれた

「……邪魔なんだが…?」

「ふざけんなよお前…何でただ寝てただけで腹に肘入れられなきゃなんねんだよ。」

…しまった…ベッドをおりようとした時腕に力をこめたのは無意識だったか…
てっきり狸寝入りをしていたものだと思っていた
物凄く不機嫌なアクセルに嫌な予感がし
すぐさまあやまろうとするが、時既に遅かった


「っん!」

口を開こうとした瞬間
いきなりアクセルが体をおこし
両腕をつかまれ素早く押し倒された

「アクセ…」

「黙ってろ。」

元々、アクセルの寝起きは極端に2つにわかれていた
すごく寝起きがいい時と
すごく寝起きが悪い時
今回はその後者だった

そこにさらに付け加えられたマールーシャの行動
事態は最悪だった
アクセルが怒る事は滅多にない
けれどそのぶん、一旦火をつけてしまうと
手がつけられなかった

怒りと欲にぬれたアクセルの瞳を見て、血の気が引くのが分かる
本能的に危険を感じたマールーシャはどうにかこの場から逃れようと抵抗するが
逃さないとばかりに首に噛み付かれ
痛みに動きを止め、悲鳴をあげる

「ぅっ…あっ!!」

無言のままさらに噛み付く力を強くされ、歯がくいこみぎちぎちと音をたてる
皮膚がさけたのか、赤く生暖かいものが首をつたった

「っ…は……やめ…ろ…!」

痛みに意識が遠退きそうになるのをこらえ、必死に抵抗するが
今度は足を思い切り開かれぎょっとする

「アクセル!」

「さっきしたばっかだから…まだ柔らかいぜ…ここ…」


そう言ってそこにあてがわれたものから逃れようと体をずらすと
腰をつかまれ強く引かれた
ズッ と音を立てて勢いよく入ってくるそれに痛みと甘い痺れを感じ
勢いよく腰をのけぞらせた

「ンあっ!!」

今更ながら、先程行為をしたあと
シャツだけをはおって寝た自分を呪いたくなった

「裂ける事なく全部入ったな…。」

「ー…っ!」

悪いのは自分ではあるが、何故ここまでされなければいけないのだと
腹ただしく思ったマールーシャは、自由になっていた手を振り上げアクセルの顔を殴った

「……っ…」

マールーシャに殴られた事で口のはしを切ったアクセルは、少し血をにじませながら静かにマールーシャを睨み付けた

「っくはっ!」

いきなり力強く打ち付け
息をつまらせるマールーシャを見てアクセルはにやりと笑う

「…気持ちいいんだろ…?ひくついてんじゃねぇか…おら」

「いっ!んんっ…はっ…!」

抵抗していた腕に段々力がはいらなくなり
気付けばその腕は、アクセルの腕を弱々しく握っているだけになった

「あっ‥あっ…や…やめ…ンくっ!あ…いや…だ!」

「嫌?なら、嫌な事されて感じてんだな。随分しめつけてんじゃねぇか…お前、Mなんじゃねぇの?」

「っあ…きさ…ま!っああ!」

強く強く最奥を突かれ
視界がかすれて意識があやふやになっていく
気持ちいい所をこすられ続け
限界に近づく

「ん…ひっ…あ!も…!」

「…っく…!」

マールーシャがイった後に少し遅れて、アクセルもマールーシャの中で果てた
熱いものが中に注がれるのを感じながら、マールーシャは無意識のうちに
アクセルの首に腕をまわし意識を手放した










コンコンッ―

朝、部屋の扉にノックされる音が響きアクセルがゆっくりと瞼を開くと
返事もしていないのにガチャリと音を立て勢いよく扉がひらかれた

「マールー…」

入ってきたのは機嫌のよさそうなラクシーヌだった
だがベッドに横たわる二人を見るなり不機嫌そうな顔をし「ちょっと…」とぶつくされた

アクセルは声を出さぬまま、゛静かにしろ゛と自分の口もとに人差し指をたてると
ラクシーヌはふと、眠るマールーシャに目をむけ
ふふくそうに小さく呟いた

「…やめてよね…マールーシャ…最近疲れてるんだから。」

「へー…よくご存知なようで…。」

お互い小声ながらも視線はバチバチと派手な音を立てそうなぐらい火花をちらせていた

「…ったく…せっかく今日は久々の休日だったのに…ツマンナイの。」

小さくぶつくされながら
ラクシーヌは静かに扉をしめ去っていった

「久々の休日だからこそ…お前に渡してたまるかよ…。」

アクセルは一人愚痴りながら
視線を少し下に向けた
アクセルにしがみつくように眠っているマールーシャ

「…可愛い事してくれるぜ……。」

そんな独り言を呟きながら
マールーシャの髪を優しくすいていた


「目が覚めたら不機嫌なんだろうな…まぁ…。」


それでもこいつはきっと
俺から離れたりはしないんだろうけど





『抱き枕と抱き枕』






「…ー…」

「お、目ぇ覚めたか。おはよ。」

「…………………死ね…」

「そんな怒んなよー。俺が悪かった。ごめんごめん!」

「…思ってないくせに…」

「バレた?」

「どけ。そして死ね。」

「えー…さっきまで気持ちよさそーに俺を抱き枕にして、寝てたくせにぃー。」

「!?」




END



お互い無意識の抱き枕
普段はかかあ天下に見えるけど
実は亭主関白

…思えばアクマル初のエロ?
そういえば絵でもアクマルでエロはかいた事なかったな…多分…