15/03/02 21:29 ◇
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 目盛り女が駅のホームから飛び降りてバラバラになったのを知ったのは、火曜日の夕方だった。
 仕事が終わって帰ってきた僕が、何の気なしにつけたテレビで、銀縁眼鏡のアナウンサーが淡々とその悲劇を読み上げていた。

『…女性は直前まで普通だったと、目撃者は証言しています。…』

 僕の世界からあっさりと、一人の人間が消えたというのに、あまり悲しみや驚きはなかった。
 ただぼんやりと、今日までだったか、と思っただけだ。むしろ、彼女はよく今日まで生きていたと思う。僕があんな精神状態になったら、その当日に生きることを諦めるだろう。

 地方局の夕方のニュース。きっと明日の新聞の隅に小さく記事が載って、それきり忘れ去られていく目盛り女。
 よくある出来事だ。誰かが駅のホームから飛び降りることも、誰かが精神を病むことも、誰かが誰かを抱くことも。

 取るに足りない、自分と関係のないところにあれば、気が付きもしない世界。

 僕は、最後まで彼女の名前を知らなかったことに気が付いたけど、大して気にはならなかった。
 テレビを消して、缶ビールのプルタブを引っ張る。

 とにかく、目盛り女は死んだのだ。



THE END

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