君に恋する(赤司×紅緒)

ああ、そうか

これが 恋 か


「…赤司さん」

最近、寝られてます?


5月の連休の前のありふれた放課後だった。
その日、僕と伊万里はたまたま日直の当番が割り振られていて
二人で放課後の業務を恙なくこなし、仕上げの日誌をやはり恙なく記入し終えようとしていたところで


「…は」


問いかけられた言葉に瞬間、思考が止まる


「…伊万里?」
「私の気の所為だったら申し訳ないんですけど…」


最近の赤司さん…顔色が悪いみたいだったから


「あんまり眠れていないのかな…って」


勘違いだったらごめんね。


情けなく眉を下げて伊万里が笑う
さらりと頭の横で高く結った二つの尻尾がさらりと肩に流れた


「ああ…いや、確かに最近あまり寝られていなかったんだ」
「ただ、伊万里に気がつかれると思っていなくて。少し驚いただけだ」


そう、言うと「あんなに疲れたような顔をしていて何を言っているんですか」と呆れたような顔をされる。
新鮮だった。疲れや動揺や、そういった感情をあまり顔に出したこともなければ気がつかれたことすらない


「…わかりやすい、か」
「はい…今にも倒れそうな顔色だったから」

少し、心配になって


「……」
「部活、休んだ方が良いですよ。本当に、今にも倒れそう」


先生には私から言っておきますから


彼女の台詞が、遠い。


「……紅緒」


少しだけ、膝を貸してくれないか


「はい…えっ」


動揺したのは名を呼ばれたからか、無茶な願いをしたからか

返事なんて聞かずに彼女の膝に頭を乗せる


諦めたような溜息と共にふわりと額に温かな手のひらの感触
ふわふわとそのまま子供を寝かしつけるような手つきで額を撫でるその手のひらが心地よくて

ゆらゆらと揺れる意識の向こうで、やけに彼女がまぶしく感じた



心地よい、ただそれだけだった
理由なんてとても簡単、そうだろう?

09/16 04:33
[黒バス]
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