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2013.09.04.00:10(0)

西村賢太の芥川受賞作、苦役列車を読みました。暗かった…。暗いというか夢がない。笑
これ私小説なのか。だとしたら本当に逆襲ですね。

主人公は中卒で家を飛び出してずっと日雇い労働を続けている青年で、父親が犯罪者で、友達も彼女もいなくて、住む場所と食事と酒とタバコと風俗のためだけに働いているのですが、時々そんな自分が虚しくなったりします。劣等感の塊で短気で傷つきやすくて陰険な性格なのでまともに会話する相手もいなかったのですが、ある時仕事場で同い年の日下部と知り合い、主人公の人生に日が差し込む――かに思わせて、結局日下部との友情は破綻して相変わらずの孤独なる日雇い労働者のままエンドという悲しさ。でも結構好きでした。
主人公は十五歳から風俗漬けなのですが、一度だけ素人女と2ヶ月付き合ったことがあって、ブスで不潔で股間が臭かったが、そんな女すら今の自分からしたら高嶺の花であり、今ここにいたら股間にオリモノやら下痢便がくっついていても喜んで可愛がるのに!!というところにすごい駄目っぷりを感じました。笑。だけどなぜかちょっと微笑ましい。
実際十代で性欲の強い男の子の頭の中ってこうなんだろうな…。女側からすると、なんでそこまでしてやりたいの?と思うのですがね;
しかしこの小説の面白いところはあんまり深刻でないところです。たぶんまだ若いというのもあるんでしょうが、確実に破滅的な人生を歩んでいるというのに、主人公の危機感があんまりないんですよね。これが四十代が主人公だったらこうもいかないし、本当に暗くて絶望のままで終わってしまうところですが;なんかバカやってた青春みたいな書き方なので、夢のない終わり方にしてはそこまで絶望的ではありませんでした。
ちょっとクセのある文章ですが面白いです。ちなみに映画化してるんですね。知らなかったけど。

そういえば同じく芥川受賞である作田中慎弥の共喰いも映画化されるらしいですが、純文学をエンターテイメント化してどうするんだろうって思ったりします。
共喰いも苦役列車も素晴らしい文学作品であるとは思いますが、エンターテイメントという定義で見るとあんまり面白いとは言えないような?手に汗握るという系統の話ではないわけですし、あれは小説だからいいんじゃないかなーと偉そうに思ってしまうんですけどね;

あ、考えてみると共喰いも十代の男の子が主人公ですね。でも苦役列車に比べるとすごい深刻なような書き方でした。同じく性欲の強い男の子なんですが、共喰いのほうが危険思考かな。笑
あれは本当に暗いしグロいから、映画のイメージは『血と骨』なんですが、会見見てるとなんか違う?主人公の父親の病的な性暴力の描写は『血と骨』を連想させます。あの映画もグロかったなー。たけしが蛆の湧いた豚の生肉を食べてたところが印象的です。たけし演じる金俊平の健康法はこの豚の腐肉と生まれたばかりの赤ん坊の便を食べることらしいです。色々とすんごい話ですよね。








2012.09.26.22:50(0)


サド文学の中ではあんまり有名ではない「ジェローム神父」ですが、なぜかピンで本になってます。
しかも会田誠さんのすんばらしい挿絵つきで!中でもイクラ丼のイラストは強烈です。なんか女の子の腹からイクラが出てくる挿絵なんですけど、よくこんな発想が思い浮かぶなと感動するくらい濃いです。
挿絵の破壊力とサド侯爵の破壊力が驚くほど合ってます。世界観が合っているのではなく、価値観が合ってるという感じ。近世のフランスと挿絵は関係ないので。笑

文字も大きいし、半分絵本のような感覚で耽美な文を味わえます。河出文庫から正統派の本が出ていますが、ちょっと敷居が高い気がするので、サド文学が初めての方は、まずホラードラコニア文庫の「ジェローム神父」を読まれることをオススメします!

ちなみに「ジェローム神父」は「新ジュスティーヌ」の一編、というかエピソードの一つ?です。なので「ジェローム神父」だけ読んでも「で?」ってなるかもしれません。まぁ外伝的なお話です。
ストーリーは例のごとく、あってないようなものです。ジェロームという男が神父になって悪徳の限りを尽くします。色んな女の子を殺したり強姦したりします。しかもなんか強姦しておいて、乳首が黒いだの、穴のつき方がおかしいだの、穴の具合が悪いだのと愚痴りったりします。笑)褒めたりもしますが。
そんでもって悪徳を褒め称えます。もはや逆ギレのようにも取れる超理論ですが、バカにすると面白くないので、真面目に捉えてちょっと考えてみるといい味がでます。

2003年に発行された本ですが、2012年に新装版で出たようです。ハードカバーからソフトカバーになったらしい。イメージとしてはハードのほうが合っているような。でも値段が少々お安くなりました。

本編(なのか?)が気になる方は「新ジュスティーヌ」をお読みください。
一応、話の流れは

「美徳の不幸(原ジュスティーヌ)」
河出文庫では本編の後に「ジェローム神父」も載っている。

「新ジュスティーヌ(美徳の不幸の改稿版)」
色々なエピソードがパワーアップしていて、ジェローム神父の話が入っている。

「悪徳の栄え」

という感じ。新ジュスティーヌは個人的にやりすぎ感があるので、小説としては「美徳の不幸」のほうが完成されている気がします。「ジェローム神父」も一緒に載ってるし、「美徳の不幸」と「悪徳の栄え」だけでいいかもしれません。私がよく言ってるサド文学の「ソドム百二十日」より、余程読み物としてしっかりしているので安心(?)です。








2012.03.27.19:32(2)



久しぶりにオススメ本の紹介。というか感想。

乱歩は同性愛風味な小説を結構書いてますが、しっかりとした同性愛を書いているのはこれ一作だけ。傑作と名高い乱歩の「孤島の鬼」です。
これはぜひ全世界の腐女子に読んで頂きたい。なぜって、半分くらいそういうお話であるからです。笑)超萌えます。悶え苦しみます。
なんというか、乱歩の好きな要素を詰め込んだ感じで、グロテスクで怪奇で狂気で猟奇でキモイくてホラー?しかもホモ!的な。しかし最終的に純愛というか、美しい話でもあります。とくに最後の二行が素晴らしい。全てを赦せてしまうほどに切ないのです。思わず「諸戸ーー!」と叫びたくなります。私、諸戸が一番好きでした。

ストーリは「恋人、木崎を殺された蓑浦は、蓑浦に恋心を寄せる親友、諸戸とともに、事件の真相に迫る」という、しっかりしたミステリーではあるのですが、奇抜なトリックがあるのは前半のみで、中盤から怪奇に移行し、後半で諸戸の蓑浦への執着がだんだん激しくなってきます。最後らへんで二人が地下洞窟で迷って死に掛けるのですが、その時の絶望した諸戸がすさまじいヤンデレで怖かったです。
なんか「人類は絶滅したのだ」とか「僕らはこの闇の世界にうまれたきた二人きりの赤ん坊なのだ」とか「蓑浦君、地上世界の習慣を忘れ、地上の羞恥をすてて、今こそ僕の愛を受け入れて(直訳:死ぬ前に一発やらせろ)」とか、そんな感じで蓑浦に襲い掛かります。笑
で、その時の蓑浦の感想。「生地獄だ」「熱い粘膜が私の唇を探してヒルのように――(略)」

とまぁ、そんな感じで楽しめます。もちろん推理小説としても純粋に面白いので、萌えながら推理したい方は読んでみてください。
ちなみに蓑浦は無自覚子悪魔です。諸戸が可哀想なくらい思わせぶりな態度をとります。諸戸もたまったもんじゃないです。ほんと可哀想な諸戸でした。



2012.03.02.18:24(2)

オペレッタのプロットをようやくなんとなく決め出したんですが、なんか46億年の恋に似てきた気がする;
ミステリーロマン?というか推理と恋が半々みたいな。

46億年の恋は男同士の異色ラブストーリーではありますが、直接的なシーンはなく、退廃的な純愛という印象です。ただ雰囲気が独特で、日本映画!って感じなので好みはわかれるかな。隣人13号とか好きな人は好きかも?
刑務所で起きた殺人事件の謎を解いていくと、男同士の色恋沙汰が見えてくる、的なストーリーです。
世界観は現代とSFが交じり合ったカオスで、なぜかピラミッドやらロケットやらが出てきます。小説には出てこないらしいんですけど、あのカオスっぷりが結構好きだったのでちょっと残念。
原作と映画でずいぶん話が違うみたいなので、原作読みたいなーと思ったら絶版でえらく高いんですが!きっとどこかの古本屋では安く売られてるんだろうな……。あーー超読みたいーーー!!
小説はどっちかというと推理にスポットが当たってるようです。映画は推理より恋の方が主軸だったので、たぶん私は映画の方が好きだと思います。小説読んでないからなんとも言えませんが;
でも小説はオペレッタの参考になりそうな気がする。高いけど買っちゃおうかな…。





2012.01.15.12:14(0)


先日購入した山田詠美の「晩年の子供」で「ひよこの眼」という話を発見してビックリしました。「ひよこの眼」は私が中学か高校の時の教科書に載っていた話で、一時期クラスの中でちょっとしたブームになっていたんです。

内容は、ある男の子が転校してきて、主人公の女の子は、男の子が気になると同時にその目をどこかで見た事があるような気がすると思っていて、ある日気づくのです。男の子の目は、かつて縁日で買ったものの衰弱し、生きることを諦め死を見つめていた、死ぬ時のひよこの眼だった、と。
って話で、いい話ばかりが載っている国語の教科書のカラーから、ほんの少しずれていたから目立ったのかもしれません。とにかくクラスの誰かが「ひよこの目」を発見して、なんか流行ったんです。私も友達から「超鳥肌ものだから読んでみ」と言われて読んで感動しました。

結局国語の授業で「ひよこの眼」はやらなかったんですが、ほぼ全員が読んでいたと思います。その時は作者のこととか全く考えなかったので、山田詠美さんが書かれたものとは知らず、星の数ほどもある書籍から偶然に出会えたなんて劇的でした。
私はもくじを見ないので、「晩年の子供」を冒頭から黙々と読んでいたら最後の短編に「ひよこの眼」とあって、形容しがたい思いに駆られてしまいました。きっとこの話は私の大切な思い出の一つなんでしょうね。



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