風が怖い、と僕は言った
風が怖い、と僕は思わなかった
大切なもののように膝をかかえて
風が怖い、と僕は言った



深夜、霧雨の露地を抜ければ
まっくろな建物に僕等は怯え
蛙の冷たさや雨音に怯え
伝線に怯え、外灯に怯え
嫌な、嫌な、
草の匂いを嗅がされた



強い、強い、
と僕等はかんじていたのだ



味のしなくなったガムを噛みながら…