ふたりのおしゃべり
(;top:bkm:clap)


2017.3.25 Sat 00:05
くちなわ

約束より少し遅れて、しろさんは僕の暮らす街の駅にやって来た。


改札を出るや否やがばっと抱きつくしろさんと、あ、ほんとに約束通りにしてくれるんだ、と驚きつつ抱き締める僕。


道行く人たちと目があった。


恥ずかしくて彼女から少し離れたあと、彼女の荷物を持って、空いた方の手で彼女の手を握った。


初めて握った彼女の手は、冬の空気にさらされてカサカサだった。


「カサカサでごめんね」


「すげえな。水仕事でもすんの?」


「洗濯は手洗いしてる」


「昭和の母かよ」






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「私で良いんですか」


「しろさんが良いんです」


「ええーーー」


「なんの「ええ」なのそれ。やなの?」


「やじゃない!」


「あのね、どうしても声で伝えたかった。文字じゃなくて。」


「うん。そういうとこも好き。」


「でしょ。もう一回言うけど。」


「うん。」


「僕をしろさんの彼氏にしてくれませんか」


「私をくろくんの彼女にしてください」


「よろしくおねがいします」




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元来ブレーキの壊れた二人だったので、お互いの気持ちが確認できてからのスピードは早かった。


しろさんがこちらに来ると知っていたので、しろさんと会ったその日にすることを決めた。


改札をでたところでハグすること。


その流れでキスをすること。


一緒にお風呂に入ること。


一緒のベッドで眠ること。


などなど。


だいたいできないと思いながら設定したこの目標は、実はほぼほぼクリアできてしまって、驚いたりした。


(駅でキスとかはさすがによくないねということで自粛したりもした。)


やることなすこと極端な二人なので、ちょっとの言い合いが破局級の喧嘩に膨らむことも何度かあった。


その度お互いのことがまた少しだけわかって、お互いのことをもっと好きになった。


そしてなんやかんやで今に至る。


初めてメッセージを送った日からはもうすぐ1年くらい。


相変わらず彼女の手はかさかさしている。


僕は彼女の手を握ってほこほこにする。


「手えだいぶやわらかくなったよね」


「保湿がんばってるから」


「ガッサガサでも好きだよ」


「うそやん」


「ハードな質感でも」


「痛いの好きなの?」


「しろさんのが好きなの」


「ねえ」


「何」


「照れますー。」














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