2013-5-29 01:06
SS
「チィ!」
わふっ、と返事をするのは千明の飼い犬、チィだ。
「久しぶりだね」
綺麗に立て替えられた東雲事務所に仁はいた。
「仁、何しに来たの」
事務所の主、東雲千明に聞かれて千明を見る。
「千里とここで待ち合わせなんだ」
「あ、そう」
「日立さんは?」
「上」
千明は二階を指す。
「日立に用?」
「ううん。いないからどうしたのかなって思っただけ」
チィを撫でながら仁は答えた。
「チィ、年とったね」
「そりゃあ、10年以上生きてるからね。あと数年かな、一緒にいられるのも」
「……」
「チィのうちに来た話、したっけ?」
仁は首を振った。
「母一人、子一人だったじゃん? 一人にするおれを心配した母親が訓練された犬を買ってきた。それがチィ。後で知ったけどチィをおれにくれたのは父さんだったんだよ」
「父さんて、……千鷹さんだよね?」
「他に誰がいるの」
千明が笑う。
「そうなんだ。千鷹が。千鷹さんて千明からみてどんな人だった?」
千明はちょっと考えて言った。
「よくはしてもらった……と思う。でもよくわからない人だったな。何考えてるのかわからないと言うか」
「ふうん?」
仁は首をかしげた。聞く人によって千鷹のイメージが違う。
千里は嫌いだと言う。
時雨は優しいと言う。
千明はよくわからないと言う。
逆に仁は千鷹という人に興味が出てきた。
事務所のドアが開く。
「仁、帰るぞ」
千里が入口で仁を呼ぶ。
「……」
「仁?」
「あ、うん」
慌てて立ち上がる。ガツンと足を椅子にぶつけた。
「いたっ」
「大丈夫か?」
千里が近付いてくる。
『間抜けな奴だな』
笑った声が聞こえた。
はっと顔を上げる。
「どうした?」
千里がすぐ側まで来ていた。
「……ち」
(千鷹さんだ!)
仁は直感でそう思った。
千里が来た時、千里と誰かが重なるようにして入ってきたように見えた。そして千里と似た声。
「仁?」
こんな体験初めてだった。
「仁!」
「千里……。うん、帰ろう」
千里に言っても信じないだろう。相手は千鷹だ。
また、出てきて欲しいなと密かに思う。
「……ていうか、間抜けじゃないし」
「は?」
「あ、ごめん。こっちの話」
ちらりとチィを見ればじっとドアのほうを見ている。
チィのしっぽがぱたぱた揺れている。
まだいるんだなとドアのほうを見たが、仁の目には千鷹は見えなかった。
千里と重なってみえたもの。
それは千鷹。
千里そっくりだった。いや、千里が千鷹にそっくりなのだ。
(また、会いに来てよ)
仁はそう思いながらドアの横にいるであろう千鷹に言った。
「またね、千明」
「うん」
千里と外に出ると千草が車のドアをあけて待っていた。
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メルマガにオマケとしてつけたSSをこちらに移しておきますね。
少しだけ訂正入れました。
2013-5-26 03:04
ああ、やってしまいました……。
夜中にメルマガ更新すみません。
日にち時間設定するつもりが、する前に送ってしまいました……。
起こしてしまった方は申し訳ない、ほんと。
メルモの配信の仕方に未だ慣れない。
ああ、もう……。
日々チマチマと書いてますが、日がたつのって早いですね。
あと1ヶ月ちょいで今年の折り返し地点が来るとか思うと……。
早いとこ更新しないとと気は焦るんだけども(´д`)
チマチマ行きます。塵も積もれば山となるといいますしね!
メルマガの頻度もうちょい頑張って上げよう。
で、メルモの配信に慣れようとか思います。
次は夜中に配信なんて事にならないようにします。