2012-3-29 23:25
―3―
蓮路、蓮路!! どうしたらいい?
どうしたら、楽になれるの。
浮気されても……、貴大が好きなんだ。
相棒と捜査している時、偶然向こう側の歩道から蓮路を見つけた。
蓮路は1人だった。
「篠山さんっ。ちょっと外れます」
「おう」
相棒の篠山にそう言って走り出す。左右を見て車道を渡り、蓮路が歩いていった方向へ顔を向ける。
蓮路の背中を見つけた。
追いかける。
蓮路は靖国通りを歩いている。
どこへ行くのか、蓮路の跡をつける。ドン・キホーテの前で立ち止まる。蓮路が顔を上げた。
時計をみる。待ち合わせでもしている感じを受けた。
ここで話しかけてもすぐに離れなければならない。蓮路とゆっくり話したいと思った。
「神谷」
ぽんと肩を叩かれ、振り返ると篠山だった。
「お前が追う奴、興味あって追いかけてきた。神谷、そっくりじゃん。あいつ。双子とか?」
「あ……、はい。でも顔を見たのは10年振りくらいです」
「ふぅん」
篠山は深く聞いてはこなかった。
篠山は2つ年上の先輩だった。的確なアドバイスをくれ、頼りになる人だ。
「戻りましょう」
「ああ」
元気そうで良かったと思った。
その日の帰宅は珍しく早く、家に帰るか少しばかり考えていた。
早く帰れば、貴大と浮気相手のセックスを見てしまう可能性もある。
過去何度か鉢合わせし、忙しいを盾に家に帰らなかったこともある。
でも、ゆっくりと寝たい。身体的にも精神的にも疲れていた。昨日と同じソファーでいいから、熟睡したかった。
気が重いまま家に帰る。
ソファーに貴大が寝ていた。溜息が漏れる。でも貴大がここで寝ているなら寝室は空いてるだろう。
寝室のドアを開け、立ち止まる。
寝室のベッドは綺麗だった。くちゃくちゃになっているのを予想してたから。
スーツを脱ぎ、そのままベッドにダイブした。せっけんの香りがする。
そのままストンと眠りに入っていった。
気付いた時は部屋が暗くなっていた。何時だと起きあがろうとして身体が動かないのに気付いた。
あったかい熱に包まれていた。
えっ!? 貴大?
貴大に抱きしめられていた。貴大の寝息が聞こえる。
まだ、抱きしめて寝てくれるんだと鼻の奥がつんとした。
いつからだろう、貴大と会話をしなくなったのは。いつからだっけ、一緒のベッドに寝なくなったのは。
貴大がもそもそ動き出す。
起きたのだろう。
離れていく温もりに思わず声を上げた。
「起きてんの?」
久々に聞いた貴大の声。
「……うん」
貴大がまた横になる。背中が暖かい。
「久しぶりだな」
「貴大」
「何?」
「……ううん。何でもない」
聞いてしまえば、本当に貴大との関係が壊れてしまう気がして口を噤む。
「」
2012-3-29 23:23
―2―
あの時、なんで連絡先を教えてしまったんだろうと思う。
いつもなら警戒して教えないと言うのに。
「疲れた……」
署内の休憩所でコーヒーを買った。
家には帰りたくない。
自分の家なのにと、自嘲気味に笑う。
貴大がいるだろう。今帰ればきっと鉢合わす。
貴大の浮気。
帰れば貴大はベッドの中。もう見たくなかった。
「……蓮路」
双子の弟の名を口にした。両親の離婚で10年以上会ってない。
いつも頼りにしていた。無性に蓮路に会いたくなった。
溜息を吐いてベンチから立ち上がると署を出た。
もう終電もない。近くのネットカフェに行こうかとも思ったが、やめた。
タクシーを捕まえて自宅の住所を告げた。
昨日も帰ってないから……。
部屋に入ると貴大がリビングのソファーに座って煙草を吸っていた。
浮気相手は連れ込んでいなかったようだ。
「……ただいま」
貴大からのリアクションはなかった。そりゃそうだ。貴大との間にはもう何もない。冷めた関係。
最初の内は浮気を攻めたけれど、もう何も感じなかった。
とりあえずシャワーを浴び、出てくる。貴大は変わらずソファーに座っていた。
出会った頃、友達として毎日時間を作り貴大は会いに来た。刑事とホスト、なかなか時間は合わないが、少しでもかみ合う時間を作り会っていた。
そして、口説かれていた。
いつの間にか情がわき、絆(ボダ)されていた。
なんて馬鹿なんだと今の大地なら過去の自分に言うだろう。
押し入れから毛布を取り出して、ソファーに横になった。傍に貴大がいるが無視だ。
寝室のベッドは使いたくない。自分のベッドだが、浮気の証拠が残るベッドで寝たくない。
大地は目を瞑る。
貴大が動いた気配がした。でも、目は開けなかった。徹夜の身体は睡眠を欲していた。すっと意識は落ちていった。
じりりり、と目覚ましの音で目が冷めた。ソファーテーブルの上に目覚ましがある。それに手を伸ばした。
目覚ましを持ってきてセットした覚えはない。
貴大が?
貴大はリビングにいなかった。寝室だろうか。
洗面所の鏡で自分の顔を観る。酷い顔をしていた。
仕事に出る支度をして部屋をでた。
3に続く
2012-3-29 23:20
これは、Pink chanmeryを書き出す少し前のもの。
短編として書いてるのでこんな出来↓
途中で切れてます。つづぎは、
Pink champagneにあるPink chanmery、
もしくは、ポケクリ版Pink chanmeryで!!
‥‥‥‥‥‥‥
―1―
元恋人との再会。
そんなの望んでなかった。
蓮路は何も聞いてこない。大地も聞いて欲しくなかった。蓮路の家までの道のり、無言で蓮路と歩いた。
「なぁ、大地。いつでもウチ来いよ? ため込むな。大地が言いたくなったら相談に乗るから」
部屋に入る前にそう言われて頷けば、蓮路はぽんと肩を叩いて玄関を開けた。
出会ったのは3年前になる。
貴大はホストだった。
新宿歌舞伎町はいくつものホストクラブがある。クラブ8(エイト)というホストクラブに貴大はいた。
大地は捜査でクラブ8に足を踏み入れた。そして貴大に出逢った。
歌舞伎町で朝、ホステスの女性が殺されていた。その女性はクラブ8に週2・3度、通っていたために、大地は相棒と共にクラブ8に来たのだ。
その時は、大地にとって貴大は数いる中のホストの1人に過ぎなかった。
「けーじさん」
何か思い出したことがあれば連絡をくれ、何人ものホストに大地はそう言っていた。
とりあえず引き上げようと腰を上げた時、貴大は大地に声を掛けた。
「話を聞いてやれ」
相棒にそう言われ大地は再び腰を下ろした。
「何か思い出した事がありましたか?」
「うん。でも、ここじゃ、話しにくい」
「仕事が終わったら連絡下さい」
「でも朝になるけど」
かまわないと大地は答えた。
……それが出逢いのきっかけだった。
貴大の一目惚れ。今となっては本当か怪しい。
大地は貴大に口説かれた。現役ホストにだ。驚いたのをよく覚えている。
「俺、ゲイなんだ。刑事さんに一目惚れ」
はにかんだ照れた顔。
その顔に大地はどきんと心臓を鳴らした。でもその意味を大地は知らなかった。相手が女なら気付けたかもしれない。貴大は男、同性だった。
「好きになった」
「……ごめんなさい」
「そう言われると思った。友達ならいいよね? 大地」
刑事さん、から、大地、に。
「……うん」
友達の少なかった大地は頷いた。
ゲイにも嫌悪はなかった。大地は新宿で育ち、そんな人を見てきたからだ。
大地にとって歌舞伎町は庭の様なもの。知り合いも何人かいる。
「大地。連絡先交換して」
人なっこい瞳を向けてきた。
2に続く
2012-3-9 22:25
もうちょっとしたら、また最強男、更新します。
最近は、花も嵐もがメインで書いてますが、サイトメインに書かなくてはと思いつつ、ポケクリメインです。
やべぇです。サイト更新ままなりません。
更にやばいことに違う話を思いつき、他の話そっちのけで違う話、書いてます。
あかんがな。
その内、不定期で書きます。
Pink champagneのスピンオフ。
短編予定が長くなった。
あと、最強男の雨宮さんの話と。
その内、upします。
させたい。
壱の話の続きも書かなくては。
書くのあり過ぎ。
思いつきで増やしすぎだな、自分。