■最愛 side.沖田■



「総司」



闇に解けそうなほどの、艶やかな黒髪に深海のような深い藍色の瞳。
口数は決して多くないけれど、彼の声音はいつも僕の心を揺り動かす。



「講義、終ったぞ。」
講義時間中ずっと隣に座って彼の横顔を見続けていた。
講義の内容なんて全然興味がなくて。
でも彼は僕の視線に慣れてしまったのか、まるで見向きもせず講義中は真っ直ぐに前を見つめていた。
その姿がとても美しくて。
まるで彼の心そのままだななんて、思っていたら気づけば講義が終っていたらしい。
「あれ、なんか早いよね。講義の時間って。」
「…何も聞いてなかっただろう。」
一君は呆れたようなため息を吐きながら、荷物を鞄に詰めている。
「…帰るぞ。」
「そうだね…今日のご飯は何にする?」
「総司の食べたいものでかまわないが」
「じゃぁ、一君で…」
「殴るぞ」
「ちぇ…」



少し怒った君の表情も好き。
他の人にはあまり違いは判らないかもしれないけれども、正直解らなくていいと思っている。
理解されれば、僕だけの君からまた少し離れてしまう。
所詮は他人。
でも、他人だからこそ愛しいと思う人には近づきたくて、僕だけの人であればいいと思ってしまう。
ただの独占欲だと理解していても、君が僕の総て。



「総司?」
「…ん?何?」
「いや、なんでもない…」



少し不安そうに瞳を揺らすのも、君が今僕のことを考えてるのも。
総てが愛しい。
もしも、君と一緒に居られなくなるときが来たとしても。
君と繋がって居られた時期が合ったことを思い出せば。
もう他に何も要らないと思えるんだ。



「一君、大好きだよ。愛してる。」
そう告げると、彼の体を引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
「…総司っ…」
少し非難するような口調で僕の名前を呼んだけれども、他には特に何も言わずに大人しくなった。






意外と暖かい体温と、鼻を掠める一君の香りに酷く安心した。




end.

 

























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