ほぼ絡みの無い二人だけど、DS時代は結構色々あったんじゃないかなと妄想。
でもこれはCT編〜WRGP開始までの話。
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サティスファクションタウンも一応の平和を見せ始めた頃、ジャックから一通の手紙を受け取った。
内容を読み進めていく内に、自身の眉間に皺が寄っていくのが嫌でも分かった。
てめえ自分で言うのが怖いのかこのヘタレ!だからってこっちに押し付けてくんなヴァーカ!
そんな感じの罵詈雑言を、手紙を読み終えた直後に掛けた電話に向けて延々怒鳴り続けていたような気がする。
もちろんジャックもそれなりの反撃をしたようだが、言うのに熱中して向こうの台詞等聞いちゃいなかったので何を言っていたかは知らない。
これだけ言えばもう大丈夫だろう。
そう思った筈だったが、今こうして扉を開けた先には件の人物が立っていた。
「初めまして、っていうべき?それとも久しぶり?カーリー渚です。貴方は鬼柳京介ですよね?」
「…ニコー、ウエストと一緒にちょっと外出してくんね?」
ニコが用意していってくれた紅茶を一口飲み、目の前の客人は口を開いた。
「私が訪ねた理由、ジャックが伝えてくれたって言ってたけど。」
「ああ、聞いてる。」
そもそも、俺たちの間に接点など一つしかないのだから、考える余地も無い。
「正直、俺は羨ましい。それでも、お前は来た。俺の前にな。」
「覚えていないのが幸せとは限らないでしょう?」
「少なくとも、俺は忘れたかった。ハチドリ、てめえは忘れているからそう言える。」
「私はハチドリじゃない。カーリー渚。貴方だって鬼柳京介であって巨人じゃないでしょ?」
「…っち。」
鬼柳は隠すことなく舌打ちを打った。この瞬間ニコとウエストを外に出す決断を出した自分の直感に感謝する。
サテライト時代なら躊躇い無くしていたこの動作も、自分を尊敬してくれるあの子供たちの前では今まで封印していた。
「まあ怖い。レディの前でする動作じゃないんだから。」
「…お前、ジャックから聞いてた性格と随分違わないか。」
「そう?やっぱり、思い出してるのかもね。共鳴でもしてたりして!」
にっこり笑った顔を、一年半近く前では誰よりも近い場所で見ていた。
トカゲとも仲が良かったみたいだが、『ダークシグナー』としては自分と一番会話を交わしていた記憶がある。
その事を、ハチドリ――カーリー自身も無意識に覚えていたのかもしれない。
「なぜ、俺を頼った?トカゲとは友達なんだろう?あいつも覚えているそうじゃないか。」
「トカゲ…ってミスティさん?彼女は忙しいもの!私が頼ったら迷惑じゃない。」
「俺も一応町長っていう結構忙しいポストにいんだけど。」
「鬼柳さんになら迷惑かけても良いかなって思っちゃうのよねーなぜか。それに全然忙しそうに見えないんだから。」
ばっさりと言い切られるが、事実そうだったから言い返せなかった。
やはりこいつはあのハチドリだ。記憶が無いなどとどの口が言うのだろうか。この性格の悪さは間違いなくヤツだった。
「そうかよ。で、何を訊きたいんだ。」
「やっとその気になってくれた?」
「じゃなきゃずっと居座る気だろ。」
「もっちろん!記者は粘り強さが大事なんだから!」
というより、ダークシグナーだった頃のヤツを思い出せば、それくらい容易に想像できた。
他のことなど全く考えずにどこまでも自分の全てを押し通そうとする。ダークシグナーとなった者たち全員に共通するものだが、こいつは特にそれが強かった気がする。
目の前のカーリーを初めて見た時は全く繋がらなかった二人の影が、今この瞬間ぴったりとはまった。
「でも、俺はお前の最後を知らない。お前が知りたいのはジャックとの勝負のことじゃないのか?」
冷めてしまった紅茶を一口飲み、そう切り出す。
眼鏡の下の瞳は少し戸惑うように動いているのが見えた。
「え、どうして分かったの?私言ってないよね?」
「はぁー?あんだけジャックジャック言ってたヤツが他に何の理由がいんだよ。」
そう返せば、顔を一瞬で真っ赤にしてぱくぱくと無意味に口を動かしていたが、そこから声が出る事は無かった。
すっかり冷えてしまった紅茶を入れ直すために立ち上がれば、無言でお代わりを催促する手が伸びてきた。
もはや、『鬼柳京介』と『カーリー渚』が初対面だという事は、闇へと葬られていた。
――――――
どういう書き方が読みやすいのかなあと模索中。
鬼柳さんが、DS時代仲間を痣になぞらえて呼んでたらまじ厨二…じゃなくて格好良いなと思って!