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140文字で書くお題ったー(shindanmaker.com )さんにて挑戦したSSが溜まって来たのでこちらに移動。


●みつにゃりちゃんで『わかりやすいけれど、わかりにくい』

名前を呼べば耳はぴくりと動き、尻尾は左右に揺れる。素直でない彼女のどの言葉よりよほど分かりやすい、と笑えば思い切り噛みつかれた。すぐに頭を撫でつつ謝っても、そっぽを向いたまま目は合わせていただけない。彼女の密やかに揺れる尻尾と逸らされたままの瞳の真意に気付くのは、もう少し先の話。


●きつねっこで『手繰り寄せた糸の先』

ころりと床に転がる毛糸玉を目で追って、不機嫌に耳を伏せる。こいつは俺の為に毛糸と格闘していると分かっている、だけどやっぱりはやく遊んでほしい。毛糸と俺、どちらが大切なのだ。我慢の限界に達した子ぎつねは、毛玉から伸びる糸を思い切り引っ張って無言のまま抗議を始めた。


●吉三で『反則だらけ』

裏切りや騙し討ちが常の世で、それは子供の世界でだって同じこと。けれど不器用なまでに真っ直ぐを貫こうとする赤毛が一人、それがどうにも危なっかしくてつい手を伸ばしてしまった。それからずっと、正しい筈の反則を繰り返す彼を見守ってきたのだ。どうして今更、この手を離すことが出来ようか。


●さこみつで『名字を捨ててあげようか』

素直でない自分が口にしたのは、そんな可愛げなんて皆無な台詞。頭の中では別の言葉が浮かんでいるのに、どう頑張っても音に出来ない。それでも精一杯の素直な気持ちを乗せて紡いだ言葉の意味はきちんと伝わったのだろう。いつもは余裕綽々の男が、驚きの余りなんとも間抜けな顔をしていたのだから。


●佐和山で『結論はとうに出ている』

本当はもう分かっている。この胸の騒がしさの理由も原因も。気付かなければよかったと幾ら嘆いてももう遅い。いっそ吐き出してしまえたら、そう考えた事もあるがそれも出来ない。知りたくもなかった答えを抱えて途方に暮れる主を見て、あの男はどう思うのだろう。己の感情に振り回される情けない主を。

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140文字で書くお題ったー(http://shindanmaker.com/375517 )さんにて挑戦したSS3つ。


●とにょで『最後の言葉』

どうしても口に出来ない言葉があった。同時に男が言うことも許さなかった。我等は主従、斯様な感情は不要だと。互いに蓋をして見ない振りをしてきた。だというのにお前は最後の最後で主の命を破るのか。自分だけ楽になって俺の声など聴かないままで。
(愛しています、そう告げて男は硝煙に消えた)


●みつなりちゃんで『君の傍』

珍しく真面目に仕事をしていた広い背中に思い切り寄りかかる。字が歪んだでしょう、と小言が聞こえたがそれは無視した。あと少しで片付きますから今暫くお待ちください、と苦笑混じりの声音には上衣の裾を握ることで応え、振り向いてくれる時を待つ。この時間が嫌いではないと気付いたのは何時からか。


●さこみつで『全部全部、君のせい』

普段ならあり得ない失敗を繰り返す自分に嫌気がさすものの、こればかりはどうしようもない。書き損じが増えたもの、些細な行動が気になるのも、妙に心臓が騒がしいのも。理由はよく分からないけれど、原因だけははっきりしているから性質が悪い。それでも決してその諸悪の根源を手放せはしないのだ。

7/30

・例の初回限定衣装にカッとなって勢いだけで書いた花屋左近と吸血鬼殿SS
・吸血鬼については色々都合のいい解釈してますのでご注意


時計の針があと半周程で重なるような時刻に、閉店後で人気のない花屋に男が二人。
花に囲まれた空間にはどう考えても不釣り合いなその姿をカウンター内の椅子に腰掛けじっと見ていれば、何を勘違いしたのか黙々と作業をしていた男は薄らと笑いながら自分の首筋を指で示しながら軽口を叩いた。

「そんなに見つめてどうしたんです、お腹が空いてるならいつでもどうぞ?」
「……いらん、お前の血は不味そうだ」

腹が空いていたから見ていた訳ではないし、そもそも別に俺は血を喰らい生きているのではない。空腹を満たす一番手っ取り早い方法が吸血行為というだけで、人間と同じ食事でも十分生きていける。無論、全く血を吸わないでも平気だ、という訳ではなかったが。

吸血鬼が血を欲するのは孤独から。そこから解放された吸血鬼は、人を襲い人から忌み嫌われるような生き方をせずにすむ。そう誰かから教わった気がするが、何分遠い昔の話だから詳しい事は思い出せない。筈だったのに。何の因果かこの男と時間を共有するうちに、ぼんやりと霞掛かり忘れ去られようとしていた記憶が輪郭を取り戻していく。

「…俺が吸血鬼だと本気で信じているのか?適当なことを言って、お前を騙しているのかもしれんのだぞ」
「そんな嘘ついて何の得があるんです。それに、嘘を吐くような人に見えませんしね」

人から愛され、そして同じようにその人を心から愛するようになった吸血鬼は、血を吸わずとも生きていけるようになる。それが仮に本当だとして、そんなものは一瞬の夢のようなものではないか。愛してくれる人間がいたとしても、何百年と生き続けられる自分とは違う。ほんの僅かな時間を幸せに過ごしたとして、化け物と言われずに過ごせたとして、その人がいなくなれば。
どうせ最後は独りになるならば、最初から他人の温もりなど知らない方がマシだ。

「詳しい事情は分かりませんけど、困っている人を放っておける性分じゃなくってね。悪い奴に捕まったと思って諦めてください」
「…お人よしめ。今に痛い目にあうぞ」
「よく言われます。……まあ、それに」

言うなりふっと距離を詰める男にハーブティーの入ったカップを包むように持っていた両手を片方だけ奪われ、ぎゅっと握りしめられる。掌からじわりと伝わる自分より高い体温は、この男が自分とは生きる世界の違う存在なのだと無言で訴えてくる。

「貴方みたいな美人になら、たとえ殺されたって本望ですから」
「……痴れ者」

まるで女でも口説くような口振りに苛立ちが募る。ならばいっそ本当に奪ってやろうか、その気になればお前など一瞬で殺せるというのに。そんな出来もしない強がりを口に出せる筈もなく、放れる素振りを見せない手を振りほどきながらいつものように一言で切り捨てた。

今日はやけにご機嫌斜めですね、もう眠いならこのまま寝ちゃってもいいんですよ。近付いた距離はそのままで甘やかせるような台詞を吐く男を無視して視線を逸らす。
ふわり、二人だけの店内に漂うのは何の花の香りだろうか。色とりどりの花に囲まれたこの空間では幾許か呼吸が楽になる理由に気付かないふりをして、そのままそっと瞼を閉じた。


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「吸血鬼は孤独になればなるほど飢えが強くなり、他人の血を食らう。誰かに心から愛される、そしてその人を心から愛する事により、飢えは満たされ花から精を吸うだけで生きられるようになる」
という情報から、左近と出会って想いを通わせ始めてる吸血鬼殿はお花の近くにいたら多少元気になるのでは…という妄想。
小話書くのが久々すぎて何だか不完全燃焼…また続きを書くなりリベンジするなりしたいです。

3/1

・現代パロ
・殿が女の子かつにゃんこ


「左近はもう出掛けますけど、ご飯は机の上にありますからチンして食べてくださいね」

そう呼びかける声に反応してか、毛布からはみ出た茶色の耳がぴくりと動いた。それがすこぶる朝に弱い彼女の了解の返事だと分かっているので、左近も小さく笑いつつ頭を一撫でしてベッドから離れる。
しかし、この日は珍しく背後から少し寝ぼけた可愛い声が聞こえてきて、慌てて踵を返すこととなるのだ。

「……土産を忘れるなよ」
「勿論ですよ、リクエストはありますか?」
「たい焼き。あんことクリーム一個ずつ」
「了解しました。その代わり、いい子でお留守番しててくださいね?」

笑いながら言えば、今度は小声でも確かににゃあと一鳴きしてくれる。その可愛さに思わず抱き締めてやりたくなるけれど、そんな事をすれば思い切り引っ掻かれてしまうので我慢する。そんな男を横目に、土産の約束に安心したのか毛布に潜り飛んで二度寝の体制に入った彼女の姿は完全に隠れてしまった。

「それじゃあ三成さん、行ってきますね」

ポンポンと毛布のふくらみを撫でれば、その下の温もりが応えるようにもぞりと動き、にゃあとくぐもった小さな鳴き声が一つ。気まぐれに見えてきちんと応えてくれる三成への愛しさとささやかな幸せを噛みしめつつ、今日もまた左近は仕事に向かうのだ。


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風呂入ってて唐突に降ってきたみつにゃりちゃん小ネタ。一週間遅れの猫の日ということでお願いします。
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