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翳りゆく

音楽に溺れたい
深く深く沈みたい
水の中で息をするように歌いたい

耳を塞いで
美しい音楽を聴くときだけ
私は自由に泳げる魚だった

自分の時間を誰かに分け与える毎日
表面を揺蕩って
陽に晒され
酸素過多に喘ぎながら
ただやり過ごしている

いつしか潜り方を忘れてしまうことを
頭の片隅で恐れているのに
見ないふりをしたまま

ほっといて

遥か遠い遠い空の向こうで生まれた雪が
はらりはらりと舞って
コンクリートの上で影を残して
消えた。

そんなものなのだ
人の生き死になんて


小さな冒険

ただ一人になりたくて
ただ自分を取り戻したくて



車のガソリンを満タンにするついでに
鶏肉と卵の挟まったパンと
はちみつの入ったコーヒーを買った

真っ直ぐな川沿いの土手を
太陽の方へ向かって走る

視界には空と前へ進む道だけ。

陽に照らされて
白く縁取られた青い雲が
空を埋め尽くしている
薄暗いのに
少し濡れたコンクリートが
隙間から漏れた光を反射して
お天気雨の日のように
キラキラと世界を照らしていた

時折舞う風花が
外の寒さと風の強さを語るけれど
音楽と暖かさとコーヒーの香りに満たされた
この車内では異国の映像のようで。

誰も受け入れず
風さえも拒んで
小さな小さな空間に
閉じこもった

救いがあるとするならば
このどうしようもない逃避行の終点が
どこでもない海だということ。

ただ、それだけ。

夏に贈った手紙

優しい音楽を聞いた

冷たい水に顔をさらし
涙を隠して顔をあげた

海を撫でた風が
長くのびた髪をカーテンにして
大きくふわりと舞い上げる

一歩踏み出すには
熱くなりすぎたアスファルトに
通り雨がカーペットを敷いて
エスコートをしてくれる

その先は行き止まり

果てしなく続く青い行き止まり。

この世界を丸く作って
「終わりなんてないよ」と
屁理屈をこねた神様へ

私はあなたの元へ行きたいのに
歩いても歩いても
ただ地べたを這うばかりで
永遠にあなたに会いに行けなくなってしまったよ

青い空と青い海はよく似ているのに
境界線は交わることなく
ずっとそこに横たわっている

春の便り

赤信号を眺めていたら
チラチラと舞う花ビラが目に入った

風が来た方向に目をやると
反対側の車線に早咲きの桜が
春の強い風にあおられて
小さな花弁を飛ばしていた

車の窓を開けて
その春のかけらが入って来ないかなと待つ。

そのうちに信号が青に変わり、
そこにだけ訪れたあたたかな季節とお別れをした

間もなく淡いピンク色が世界を染める
その時こそは私の元に招き入れられたらいいな
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