ログイン |
素晴らしい報道を目にした。日本が第二次世界大戦中、ナチス・ドイツから逃れてきたユダヤ人の保護を指示していたというのだ。日本外務省が東南アジアの大使に伝えた公電を英国が傍受・解読し、英国立公文書館が最高機密扱いで所蔵していたという。
記事によると、公電は「ユダヤ人を追放することは国是たる八紘一宇の精神に反するばかりか米英の逆宣伝に使われる恐れもある」として、ドイツやイタリアの「排ユダヤ政策」と一線を画す内容だったという。
日本は当時、ドイツと枢軸国同盟を結んでいたが、「日本の人権意識の高さ」をうかがわせる重要な史料だと思う。
これまでも、日本人がユダヤ人を救った例は報告されている。
樋口季一郎陸軍中将は、満州国ハルビン特務機関長だった1938年、迫害を逃れ、ソ連・満州国境で立ち往生していたユダヤ人難民に食料や燃料を配給し、満州国の通過を認めさせた。リトアニア・カウナス日本領事館の杉原千畝領事代理は40年、ドイツの迫害から逃れるユダヤ人難民に日本通過ビザ(命のビザ)を発給した。
今回の公電に従って、東南アジアで保護されたユダヤ人がどれほどいるのか、深い実態が分かれば興味深い。近現代史専門家による今後の研究を期待したいところだ。
日本は第二次世界大戦前から人権意識が高かった。国際社会でいち早く、「人種差別の撤廃」を掲げたのも日本である。
第一次世界大戦後のパリ講和会議・国際連盟委員会(19年)で、日本は人種差別撤廃の提案を行った。国際連盟創設を主張したウッドロウ・ウィルソン米大統領が反対して否決された。
当時、ヨーロッパ系の白人以外は基本的にすべて差別された。日本は近代化を成し遂げた経緯から、「名誉白人」として遇されていた。欧米列強は多くの植民地を抱えており、人種差別に基づいて支配していた。日本の提案は、欧米列強を敵に回すことに等しかった。
日本が第二次世界大戦の開戦直後、東南アジアに進出した主たる目的は資源獲得だったとされる。ただ、同時に、欧米列強の植民地を解放する大義も持っていたのではないかと私は思う。
中国や韓国は戦後、日本軍の侵略や蛮行を批判してきた。日本国内でも「自虐史観」一色だった。近年になって、今回の報道のように、日本に対する違う視点が提示されてきた。
中国当局による新疆ウイグル自治区での弾圧を受けて、国際社会は人権意識を改めて高めている。日本人は自国の歴史にもっと自信を持つべきである。国際社会でも誇るべき話題といえる。
■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『強い日本が平和をもたらす 日米同盟の真実』(ワニブックス)、『いまそこにある中国の日本侵食』(ワック)、『わが国に迫る地政学的危機 憲法を今すぐ改正せよ』(ビジネス社)など。