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結婚、出産、沢山のありがとう。

前回の更新が8月…。
更新を待っていてくれた方がいるのか分からないけれど、長らくお待たせいたしました。
もう少しだけ、お付き合いください。




職場を退職し、結婚に向けて進み出した浩太と私。


結婚式は挙げなかった。


ホテルで親族の顔合わせを行い、ドレスを着て写真を撮って貰った。



式を挙げない代わりに、私達はマイホームを建てる事にした。




家も建ち、私は新たに県庁の臨時職員として働き始めていた。


結婚して1年。新しい職場にも慣れてきた頃。







私のお腹に小さな命が宿った事を知った。

初めての妊娠。私、26歳。


つわりはキツかったけれど、なんとか頑張って仕事は続けた。
しかしやはり臨時職員という立場上、育児休暇なんてない。


赤ちゃんが産まれてくるギリギリまで仕事を続けたが、やはり退職する事になった。









そして夏の暑い昼下がり。
元気な男の子を出産した。





浩太はすごく喜んでくれた。
この頃にはピアスを取り、髪も黒く戻し、すっかり父親の顔になっていた。




4年後には長女も産まれた。





育児に追われていると月日は目まぐるしく過ぎて行く。



いつの間にか月日はあっという間に流れ、去年の暮れに結婚10周年を迎えた。


もう昔のような体力も情熱も残っていない。
育児に奮闘してきた9年間。まだまだこれは続きそうだ。

これからも子供の成長を見守りつつ、悩み、苦しみ、喜び…浩太と共に幸せを共有していきたい。




沢山のありがとうを込めて

退職

結婚を決めてまずしなければならない事。


お互いの親への挨拶。


浩太も私も、これまで一度も挨拶へ行った事が無かった。それは浩太の両親の意向で、「本当に結婚したいと思った子しか家には連れてくるな」と言われたからだそうで。


一家全員公務員というし、ものすごく厳格な両親だったらどうしようかと緊張したが、会ってみるととても優しい両親で安堵した。



浩太もうちに挨拶に来た。髪を真っ黒に染めて。
私の両親はもともと適当な両親だ。反対する事もなく「あ、結婚するの?」みたいに簡単に済まされた。




そして一番の問題は両親より、そう。職場への報告だ。




社長は本社にいる為、取り敢えず職場で一番権限のある工場長へ報告。浩太と一緒に「話があります」と言うと、察したのか応接室へ通された。




浩太「結婚、しようと思います」



工場長「そっか…うん。付き合ってたのは何となく分かってたから、いずれそうなるだろうとは思ってたよ。そうかぁ、結婚…か。いや、おめでとう」



浩太、私「ありがとうございます」



工場長「じゃあ社長には俺から言っておくから」













そして数日後。



本社から社長がやってきた。総務部長を引き連れて。
さぁ、いよいよラスボスの登場だ。





さっそく私は会議室へと呼び出された。



社長「浩太君と結婚するんだってね」



私「はい」



社長「そうか。うん、まずはおめでとう。」



私「ありがとうございます」




社長「それでね、こういう事は今まで前例がなくてね。総務部長とも話し合ったんだ」



私「はい」



社長「君はこの工場の経理をやってるだろ?とても重要なポジションだ」




そうなのだ。私はこの工場のお金の全てを任されている。
通帳、金庫、手形、小切手、従業員の給料etc…




社長「会社の内部事情を知っている君が、同じ会社の従業員と結婚となると、このままじゃ困るんだよ」




そんな気はしていた。覚悟が全く無かった訳じゃない。所詮は小さな中小企業だ。そんな優しいものじゃない。



社長「君はよく仕事が出来るし、こういうのは申し上げ難いんだが。…辞めて貰う事になるんだが、いいかい?」





そう、覚悟が全くなかった訳じゃない。けれど面と向かって言われると、少しショックだった。





私「はい、分かっています」






浩太は最後まで不満そうだったが、私は「どうせ定年まで働く気もなかったし、寿退社で丁度いいよ」と何とかなだめた。






事務所での送別会では、木元君が大きな花束を用意してくれた。
そして、若い従業員達みんなで、居酒屋を貸し切って結婚を祝ってくれた。30人分位はあるような大きなケーキを用意してくれた。



恥ずかしさで死にそうになっていた浩太をみんなで小突いて笑った。






そして、私はこの会社を辞めた。





そして最終章へ

夜の空港。周りを山林に囲まれたその場所は、市街地とは違う雰囲気を漂わせている。
静かな中に突如現れる巨大な人工物。
キラキラとした沢山のライト。様々な場所へと旅立つ人達。











浩太「壱が旅行に行ってる間、色々考えてた」



私「何を?」



浩太「俺には覚悟がなくて。未来への覚悟」



私「………」




浩太「壱が最近結婚意識してるのは知ってたんだけど、いざ!って思うと恐くて。なかなか先に進めずに、気付けば付き合ってもう3年半も経ってて。」




私「うん」



浩太「壱が今回旅行に行って、一人で家にいたんだけど。…壱がいないうちの中がすげー寂しくて。やっぱ壱がいないと嫌だなって思って」



私「うん」



浩太「そう思った瞬間、覚悟できたから」




そう言って浩太は小さい箱を手渡してきた。




中には、高級時計が。





浩太「同じ時を刻むっていう意味で。お揃いの婚約時計。…俺と結婚してください。」




ビックリした。
確かに私は結婚を意識し出してはいたけど…浩太に強要はしたくなかったから結婚の話を出した事は無かったし、いつの間にか「結婚」というワードは私達の中で禁句のようになっていたから。
浩太がこんな事を考えていたなんて。昨日の夜に電話した際はいつもと全然変わらずだったのに。



でも、本当に。本当に嬉しかった。






私「はい、喜んで!」






小さな日本の、小さな田舎町に生まれ。
特別な才能もなく平々凡々に育ってきた私は。



そんな中でも色んな人と出会い、別れ、そしてまた出会い。
永遠を共にしたいと思える人を決めました。





空港のネオンに照らされ、車の中で。
私たちは永遠の誓いを立てました。




浩太「あ、因みに時計の他に指輪もあります」



私「マジで?」



浩太「俺が会社の機械で作りました」




私「さすが職人!!」









もう少し続きます。





気持ち

全然知らなかった。


木元君の気持ち。




私がずっと耐えていた時、木元君はずっと私の事を見てくれていたんだ。





ありがとうという気持ちと、ごめんねという気持ちがごちゃ混ぜになり、涙が流れた。









でも私が選んだのは浩太だ。

家に着けば浩太が待っている。浩太の前では今まで通りでいなければ。浩太を不安にさせたくない。





ただ。二次会から家に着くまでの間はどうか、この止まらない涙を許してください。









それから、3年が過ぎた。







木元君も無事単身赴任から帰ってきた。
先輩と後輩として、上手くいっている。





浩太とは相変わらず。
同棲も、3年も続くとカップルというより最早夫婦のような感覚。
たまに喧嘩もするが、仲良くやっていた。




いつの間にか親に「結婚はまだか」と言われるような歳になり、周りの友達も一人二人と結婚して行く。
そうなると自然と「結婚」のふた文字を意識するようになる訳で。




まだ10代の頃、自分が異性と付き合うなんて信じられないと思っていた。

20代になっても、自分が結婚なんてあり得ないと思っていた。



そして今。



自然と人間は大人になっていくんだなぁ、と思い始めていた。








そんなある日、私は友人に会いに関西へ向かっていた。



初めての関西はとても楽しかった。2泊3日、色んな場所へ行き、色んな美味しいものをいただいた。
そして帰る時間。


名残惜しくも友人と別れ、帰りの飛行機に乗り込んだ。


地元の空港に着いた時にはもうすっかり日が暮れていた。
空港には浩太が迎えにきてくれていた。
駐車場に行き、車に乗り込む。






私は飛行機が好きだ。小さい頃から空を飛ぶ事に憧れていたせいだろうか。初めて飛行機に乗った時に見た雲海に感動したせいだろうか。もう覚えていない。




車に乗って夜の飛行場に輝くライトをうっとり見ていたら、浩太がふと語りかけてきた。







二次会

忘年会の二次会は、事務所の人達だけで居酒屋で行われた。


私は始めお局様と飲んでいたが、途中でお局様は帰宅。
みんな酔いが回って訳が分からなくなってきていた。斎藤さんが何やら叫んでいる。


そんな時、私の隣にドカリと腰を下ろしたのは。


木元君。




木元君「どーもー」


私「はは、どーもー。大分酔ってる?」


木元君「いや、まだまだっすよ。壱さん飲んでます?」


私「ん〜これ以上飲んだら帰れなくなりそうだから(笑)」


木元君「……壱さんさ、浩太さんと付き合ってるんだって?」



私「えぇえええ!何突然!」



木元君「さっき斎藤さんから聞きました」


私「あ〜、そっか、うん、そう」




木元君「あーーー、やっぱホントか」



私「ははは、お恥ずかしい」



木元君「…俺、職場恋愛は絶対ないわーって思ってたんですよ」


私「…うん、私も最初思ってた」



木元君「けどさ、いつだったか、壱さん目ぇすっごい腫らしながら仕事してた時あったじゃん。俺この会社入ってちょっとした頃かな」





(ケンと別れた時だ…)





木元君「目ぇ真っ赤にして、泣きそうなの何とか耐えてる状態で仕事に集中しようとしてるの丸わかりで。…俺、何があったのか分かんないけど、何かそれ見た時、たまらなくなって。ホント、職場はないわーって思ってたのにね。壱さんは俺の事弟みたいに思ってたかもしれないけど。俺は…姉さんには見れなかった。だから、転勤から帰ってきたら告ろうって思ってたんです」



私「……」



木元君「でも、先に浩太さんに取られちゃいました☆あ、俺二人の仲どうこうしようとか無いから。そこは大丈夫。壱さん男見る目ありますよ、俺逆立ちしたって浩太さんには敵わないっス。浩太さん、ホントすげー格好いいから。見た目も、中身も。浩太さん以外なら許さないけどね(笑)浩太さんなら、納得っス」



私「そっか…」




木元君「ただちょっと俺の気持ち伝えたかっただけだから」



私「うん、…ありがとう」



木元君「幸せになってね」









そして次の日、木元君は本社に帰っていった。
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