クマシエル
【小説】うちの母が宇宙の被捕食者だった件B
2017/02/24 12:36
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 引きニー息子更正計画第1弾、部屋の改善は終了!
流石に全部は可哀想だと思ったので息子が昔良く観てた『エヴァン』のレイちゃんの制服フィギュアだけは箱は潰して勉強机の引き出しにしまって、フィギュアはコレクションケースに入れて机の上に飾っといたけどね。
次は身分を何とかしないとと思ってるんだけど、うちの馬鹿息子が引きニートになったのって、前にも言ったかもだけど70クルートサナン、ええと約22年も前からで、その時まだ地球の歳で8歳だったんだけど、つまり小学校中退って訳よね。
せめて高校位出てなきゃ働いたりとかも無理なんじゃないの?
と思ったから高校卒業に相当するとかいう大検とやらいうのを受ける事にしたんだけど、今は名称が変わって高卒認定試験とかいう名前らしくて、あたしはちょっとブランクもあるし家庭教師さん頼もうかと考えたんだけど、その話を内緒にするのもどうかと思っておとうさんにしたら、
「俺が教えてやる」っておとうさんが!
 馬鹿息子をあんなに嫌がってたあの人がどうしちゃったんでしょうね。
ま、せっかくなんでお願いしたけどね。
最初の日におとうさんたら会社帰りに小学校6年のまとめドリルを買ってきてくれて、引きこもりは小3からだけどーなんて思いながら、中身は女子大卒のあたしなのですらすら解いてたら、
「大丈夫そうだし明日は高校のドリルにするか」なんて言ってんの。
8歳から学校行ってない息子相手に過信し過ぎだと思うんだけど、ま、あたしはそれでいけそうだけど、何か普通なら無謀と言わない、そういうのって?
よく分からない人だってその時思ったけど、ま、息子の面倒をみてくれる気になった訳だから悪い気はしなかったわよ。


 それからの日々もおとうさんは真面目に毎日家庭教師してくれて、8月の1回目の試験まで本当に2人で勉強したのね。
そのお陰でしょうね。
2回目の11月までで合格する気でいたのが1回目で全教科合格して、資格試験通ってしまいましたよ。
何だか上手くいき過ぎよね、実際。
あたしは半ば狐につままれた状態なんだけど、おとうさんは当然という顔で、ご褒美にどっか連れてってやるなんて言いだすし、一体どうなっちゃったんだと思わざるを得ないわね。
本当に冗談じゃなく前のおとうさんは馬鹿息子を完全に見放していたはずなんだけどね。
でもあたしももう何年も何十年も家族で出掛けたりしてなかったから何か嬉しいわ。
 で、2人でUSJに行ってきました!
ホテルに泊まってね、ゆっくり3泊4日。
おとうさん、初めて有給使ったそうよ。
最近何だかおとうさんの新しい面ばかり見てる気がするわね。



 さて、USJなんだけど、行った事ある人なら知ってるかもだけど、とにかくどのアトラクションもライドも混んでてすんなり入れないのね!
それで、何か面倒臭くなっちゃってたら、おとうさんにランチに連れていかれた。
パーク内のグリルで昼からお肉を食べてお腹いっぱいで、眠くなってきた。
考えてみたら元のあたしじゃなくて引きニート息子のお粗末体力のせいでしょうね。
こんなに軟弱ならアルバイトも出来そうにないし、帰ったら体力作りも必要だなと頭の中にメモした。
「ほんとに眠い」と言ってたら、おとうさんがあっさりホテルへ連れ帰ってくれて、あたしは部屋に着くなりツインのベッドの片方に倒れ込んで熟睡してしまった。
起きたらおとうさんが横で寝てて今自分が馬鹿息子の体なのを思い出して何かびっくりしたわよ。
男の親子って普通そんな事しないよね。
ま、中身のあたしはおとうさんと寝るのなんかむしろ珍しくも何ともないんだけど。
おとうさんの寝顔を何ヵ月ぶりかに見ておとうさんも歳とったなあって思って。
でも寝顔が何かくつろいだ表情浮かべちゃって可愛いなと思ったりしてね。
でもあたしが居なくなっても全然気にしてないみたいであれからずっとちょっと悔しかったりはしてたんだ。
何か今の寝顔見てたら、ま、いっかなんて思ったけど。
あたしが思ってたよりこの人結構息子の面倒みれる人だったみたいよね。
あー、しかしうっかりしてたわ。
歯も磨かずに寝ちゃうなんて。
美味しい肉を育てるには歯の健康は不可欠なのに!
今更ながら慌てて歯を磨いてると、何か声をかけられた。
「芹香」
「ん?」
 ベッドの方から聞こえたのでおとうさんが言ったみたい。
うがいを済ませて戻ってみると、おとうさんはまだ寝てた。
寝言だったのかな?



 旅行から帰ってから、あたしは毎日走り始めた。
体力つけなくちゃね。
それとね、おとうさんに頼まれて自分ちの家政夫さんをしてるのね。
1日2、3時間で2000円くれるって言うから毎日張り切って掃除洗濯炊事と頑張ってるわよ。
いやー、専業主婦だった時は当たり前にする事でしてたけど、今仕事としてお金になるのは何かちょっと嬉しい気がするわ。



 そんなある日あたしは、
死んだ━━

         続く 



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