クマシエル
【小説】うちの母が宇宙の被捕食者だった件
2017/02/21 09:43
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【姿を無くしても、その存在を見つける事が出来るだろうか?】


「1月某日。
この日の記録でもう最後にしようと思う。
うちの引きニートがいつかは変わると信じて、ずっとこの日記をつけてきた。
日記に引きニートの記録を始めてから今日でもう70クルートサナン(地球の一般表記に近づけると70はこちら表記だが、その後も直して、70千万?秒位)が経ったが、その間にあの子は何も変わらなかった。
これ以上は虚しいだけだ。
もう最後にしよう。
 この頃周りに狩人が近づいている感じもあるからあの子に構うのもどのみち潮時だ。
だけどあの子は1人で大丈夫だろうか?
これからもおとうさんには見放されたままだろうし食べていけるんだろうか?
いや、荒療治でもしかすると今度こそ…
いや、それこそ都合がいい考えなのも分かっている。
 だけど構うから治らないと、散々おとうさんにも言われたじゃないか。
あたしがいなくなったら或いは…
いや、無駄に期待しても何にもならない。
もう寝よう。」


という日記を書いてからは、あたしはもう毎日自分が今日も無事だったという日記しか書いていない。
今日で4ルートサナン(普通にええと29日位)経った。
まだ狩人に捕まらないとは奇跡だ!
もしかしてこのまま逃げおうせるかもしれないのでは…
いや、そんなに甘くはないだろうけど。



うちのオカンは五月蝿くはないがたまにうざい。
引きこもりで風呂もあまり入らない俺を風呂に入れたくてオロオロしてたり、マグカップが溜まってるのを出してとすがる目で見たり。
親父に俺の事で五月蝿く言われてペコペコしてるのなんか、うざ過ぎて気が滅入る。
飯を食わなきゃ食うまで持ってくるし、俺は引きこもりだがヒッキーにありがちに太るのはクソダサいってのにな。
あ、俺はそれ程太ってないがな。
けどあいつの希望を聞いて食べてたら確実にど底辺まっしぐらだと思うぜ!
 そんな俺だが、今日は腹がすいていた。
あいつが部屋の前に何も持って来ないなんて!
愛想つかしたのか?
まさか!?
20年以上つきまとったのが今になってなんて事は無いだろう。
 台所で何か調達する事にした。
で、台所で物色中だがカップ麺も袋麺も無いときている。
ん?
テーブルにチョコレートかな、1個落ちてる。
銀紙に包まれてるから、汚れてもいないし、包みをのけて口に放り込んだ。
噛むとジュワーと濃厚な洋酒が広がる。
多分ウィスキーボンボンとかいうやつだろう。
そういえば俺は甘酒の匂いだけでも酔っ払う奴で!
と思っても後の祭り。
クラクラして俺は…



「本当に馬鹿な子」そう一人ごちたのは、あたしです。
4ルートサナンが過ぎて少しして、とうとう狩人に見つかったあたしは肉から種(タネ)を外されて、どうやら肉は持っていかれたけど、種は捨てていかれてしまったみたいで。
説明遅れましたがあたしは地球人からすると宇宙人てやつで、だから地球人とは全然生態が違うんだけど、実を言うとあまり人間に含められないかもしれないんですね。
だってあたし自身の成分と厳密に言えるのは、肉と種で成り立つ人の体の種の方だけで、肉は種を植えられてから寄生して自分の肉として育てているだけなので。
しかし肉から外した種を植えもせず捨てるなんて、どこのアングラ狩人かと思う。
あ、これも説明しておくと、あたし達は種の中の液体が真の本体という感じなので、狩人が求める肉を得る為には種を肉から外して肉を無力化し、普通のまともな狩人なら新しく育てる肉をあたし達に提供していくもんだけど、最近の狩人は本当にもう。
あたし達は捕食される為の肉を育てるだけの卑しい生き物ですが、地球人や狩る側の生物と違って割と不老不死が売りなんですよね。
例えばなかなか寄生出来ない時も地球の生物、肺魚が乾季を泥の膜で体を覆って乾燥せずに雨季を待つように、種の周りにカモフラージュの膜を張っていつまででも待ってられます!
だからあたしも銀の膜を張ったんだけど…
息子がーっ、あの引きニートがーっ、意地汚く食べちゃったのよ!
どうしよ、30歳にもなる古肉のくせに。
育てなくても十分育っちゃってるし、今から食肉に育てるのも無理だしさ。
それにあたしの体が昔地球の人間らしく産んだ子をよ、あたしが寄生してるから仕方なく管理するのもネグレクトするのも何だか気がとがめるというか。
だけど、あたし達が体内に入ると出ていくまでは元の人格(今回の場合はあたしの息子ね)はあたし達の支配下に置かれるから早く出てやらないと、かなり影響が大きいでしょうしね。
 ま、とりあえずはあたしが新しい寄生先を確保するまでは管理してやるしかないかもなんだけど。



で、この際だからやった事、予想がついた方もいるかもだけど、そうです!
我慢ぶちきれの野蛮な母による引きニート息子の楽しい強制更正プログラムは次号にて!
是非ご観覧、皆々様合い揃いてお来し下さる事を心よりお待ちしております。
         続く   



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