久しぶりに投下。そして逃げる。(←
ツッコミとボケが安定していないのは仕様でs…
「…准将が?」
部下の急な通信に、そして続いた内容に酷く動揺してしまう。
『はい、何処にもいないんです。執務室や自室にも見当たらなくて。デッキにも…』
「俺何も聞いてないんだけど。まさか掻っ攫われたんじゃないだろうな」
もちろん冗談だ。が、向こうで息を呑む声がする。本気に捉えたのだろう。
「冗談だって。それでも何処に行ったか分からないままなのは困るし、取り敢えず後で俺から准将に連絡入れてみるよ」
『お願いします』
あぁ、と返事をして無線を切った。
さて、一体どうしたものか。
准将が不意にいなくなることは滅多にないのだが、いなくなった時、簡単に見つけられたこともなかった。どんなに注意しても、この子供のような癖は全然治らない。また母艦内、もしくは地上をうろつく羽目になるのだろうか。
そんな考えを思い巡らせていると、また無線機に連絡が入った。
「はい、こちらリグディ大尉―」
『あぁ、君か』
「げっ」
まさかのシド・レインズ准将閣下その本人だった。
「…閣下」
『なんなんだその嫌そうな声は』
「当たり前でしょうが。あぁ、君か。じゃないですよ、俺しかいないでしょ。あんたねぇ、どれだけ心配させてると思ってるんですか。さっき部下から連絡きましたよ」
『…すまない、間違い電話だったようで。ではこれで』
「いやいや待てコラ」
この状況に及んでそれか。
「何が間違い電話なんですか。俺ですよ、副官のリグディ大尉!」
『君の説教を聞きたくなくて』
子供かあんた
「なら勝手な行動しないでください。今どこにいるんですか」
『下だ』
「だろうと思った。さ、早く帰ってきてください」
『帰れなくなってしまった』
「は?」
准将の言葉が理解出来ず、変な声が出た。どういうことだ、今のは。
「帰れなくなった?まさかあれですか、迷子の迷子の小猫ちゃん」
『違う。誰が小猫だ』
刺のある口調で即時にそう返された。
というか小猫か。あんたの突っ込むべきところは猫なのか。
そう言い返しかけたが、かろうじて堪える。
『迷子ではない。エアバイクが動かなくなっただけだ』
「馬鹿かあんた」
色んな意味が篭った、出てきた言葉がそれだった。
『馬鹿とはなんだ、馬鹿とは』
「そりゃそっちのほうが何倍も質悪いですから。…そっか、エアバイク故障したんですか」
『何故かは知らんが』
もう何も言えない。
だがこうしてだべっているだけ時間の無駄だ。
「取り敢えずすぐそっち行きますんで場所教えてください」
『ボーダム』
「うわ、人かなりいるんじゃないですか。恥ずかしいなー故障とか」
『黙れ』
またも刺のある言葉。どちらかと言えば俺が言いたい気分だ。
ふとある事に思いあたる。
「ボーダムって、何か用でもあったんですか?言ってくれたら代わりに行くのに」
『それだと意味が無いのだ』
「は?じゃ本気で何の用だったんですか」
息を呑む気配が端末越しに伝わってきた。向こうで何かまずいことでもあったのだろうか。それとも追求しないほうが良かったのか。
『さっきのは忘れろ』
「は、い?」
『いいな?』
鋭利に響いたその声に、すべきことはただ一つ。否、他言は許されない。
「了解です、閣下」
『それでいい。そして早く来い』
「そこは命令されても腹立つだけなんですけど。准将の自業自得でしょ」
『煩い。いいから来い』
「はいはい」
頼み方ってもんがあると思うんだけどな。部下に対してもさ。
「ついでに色々寄りますか、デートみたいに、」
『果ててしまえ』
「ひっでぇ!あんた副官をなんだと思ってんだ!」
『今のは明らかにお前の失言だと思うのだが』
「冗談だと察してくださいよそこは」
それでも出来ればしたかった、とは言わないでおく。
じゃあ準備してきますんで、と告げて無線を切ろうとする。
『あ、待て!』
呼び止められた。
「なんですか」
『色々、というわけには行かないが。何か食べていかないか』
「外食ですか。何処へ?」
『決まってない。ファミリーレストランでも、君の好きな場所があるならそこでもいい』
「うわぁ本当ですか」
成る程悪くない。しかし待てよ。
「でも軍服だと人目引くんじゃ、」
『今は私服だ。だからお前も私服で来れば問題ない』
「了解です」
そして無線を切った。
私服か。何を来て行くか。個人的には、毎日軍服だった准将の私服姿は是非見てみたい。それだけではない。外食自体、中々無いので誘われたのは嬉しいのもある。
たまには、こんなのも悪くない気がした。