朝から不気味に響く声に、うんざりな3人。声の主は、今月に入ってから上機嫌だ。
「…ウルサいびょん」
「仕方ないよ…」
「…めんどい」
三者三様の回答。しかし、彼が上機嫌でいるのを見るのは嬉しいのも然り。
「骸様が幸せなら、私嬉しい」
そう呟くクロームに残る2人も同意した。そう、彼らを救い未来を与えたのは紛れもなく彼であり、その彼の為ならばとの思いはいつだって変わらない。
「でも、いい加減あのサンバはもう飽きたっつうのぉ」
犬が頭を掻き毟りうずくまる。そんな犬を視界端に捉えながら、眼鏡の位置を直しながら千種は言う。
「後3日我慢だよ。犬」
「まだ3日もあんのかよ〜!?ガマンれきねぇ…」
「ボスの事大好きだから」
クロームの言葉に、ついかっとなった犬は叫んだ。
「だぁーっ!うさぎのどこがいーびょん?わかんねぇっつうの」
「ボスは優しくて温かいよ。私も大好きだもの」
「けーっ!優しいらぁ?あれは弱っちいうさぎだびょん」
「綱吉君は、可愛いですよ?」
いつの間にか傍に来ていた事に驚く3人は、骸の顔付きに更に驚いた。
「…骸様?」
「何です?クローム」
飛び切りの笑顔。向けられた事により、跳ね上がる心音。頬を紅く染めクロームは、只々見つめた。
恋は人を変える。
まさしくそれを証明している骸を見ながら、千種は考える。
きっと、彼だけではなく綱吉に恋慕を寄せる者は多い筈だと。そして厄介にも、無自覚な犬と健気なクローム、無気力な自分と彼が気になるのは確かだった。
でも―
「だだ漏れ過ぎです。骸様」
だから、少しだけ意地悪に言ってみたくなるのは仕方がない。
「なっ、何言ってんですか!千種。ぼ、僕の何が漏れてるって言うんですか」
はぁっと、態とらしく溜息を付き言う。
「全てですよ。骸様」
千種の言葉に、ムッとした骸はビシッと人差し指を向け文句を垂れた。
「失礼でしょう?僕は只、鼻歌を歌っていただけですよっ!それを、だだ漏れとは何ですか」
あのサンバは執着心丸出しの歌だった筈で、本人の下心の現れと言えた筈。それを鼻歌とは、綱吉に同情を隠し得ない。
骸は、ふいと踵を返すと自室へと向かった。
「何と言われようとも、綱吉君は僕のモノですよ。残念ですが、千種達にも譲る気は有りませんよ。綱吉君は僕の恋人だ」
骸は、自室のカレンダーに×を付けながら笑う。
―さて、今年はどうなりますかね?楽しみですよ、綱吉君
クフフ笑いが木霊した。
―end