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うさぎ 9


「僕ね、結構怒っているんですよ?今日のこの格好もそうですけど、クロームと結託していたのが気に入らない」
「う…ご、ごめんなさい」
「仲間外れにするとは、いい度胸です。どうなるか、分かってますよね?」
「いや、えっと、その…ごめん!ごめんってば。でも、言い訳させて貰えるなら、この格好はクロームと千種さんたちに仕組まれたんだよ。作ってって頼んだのは、俺だけどさ、オオカミの格好を頼んだんだよ。それなのに、ウサギがくるし…は、恥ずかしかったんだって。好き好んでこんな格好してる訳じゃないし」
「へぇ、クロームたちのせいにするんですか?流石、ボンゴレ10代目を襲名するお方ですね。汚いですよ、沢田綱吉」
「継がないってば。それに、せいにした訳じゃないよ」
「では?」
「俺が優柔不断で、人任せにしちゃったのが原因です」
「クフフ。そうですか。まぁ、いいでしょう。今日、この日に言う台詞でも言って下さいよ。そしたら、許して差し上げますよ。僕は、寛大ですからね」
「…寛大?寛大なヤツってここまで意地悪言わない、よな?」
「何ですか?沢田綱吉」
「な、何でもないです。えと、言葉言えばいいんだろ?」
「ええ」

うんうん唸りながら考える綱吉を、にやにやと見下ろす骸はウサ綱の可愛さに視線を奪われていた。細い腰に白い肌。そのボディラインをあいつらに見られたのは、やはり腹立たしい。

「と、と…なんだっけ?トリ…がどうのって言った筈なんだけど」

悩む綱吉の様子にほくそえみながら骸は言った。

「Trick or Treat?」
「とりっくおとり?」
「Trick or Treat?ですよ」

ゆっくりと言った骸の後に綱吉は片言発音でやっとのことで繰り返す。

「とりっくおあとりーと?」

にっこり笑って骸は両腕を広げて見せた。綱吉には意味がさっぱり分からない。
骸はそれも想定内の事だと言わんばかりに、更に笑う。綱吉にしか見せない笑顔だ。

「さぁ、どうぞ?」
「え?何がどうぞなの?」
「クフフ。僕はお菓子を持っていませんよ。って意味です」
「お菓子?」
「分からないのであれば、僕が言いますね?Trick or Treat?」
「?え、何??」

クフフ、クハハと笑いだした骸は、意地悪い光を一瞬瞳に湛えると綱吉の頬にキスを一つ落とした。

「では、存分に可愛がって上げましょうかね?綱吉君」

耳朶を甘噛みするとべろりと舐め上げる。綱吉の背をゾクゾクと波が走り抜ける。綱吉は焦って聞き返した。

「何してんだよ?骸。意味が分かんないって!教えてよ」
「クフフ。おバカな君に教えてあげますよ。そう、手取り足とりね」
「や、バカなのは認めるから、ヘンな事しないでよ」
「Trick or Treat?ってね、お菓子をくれなきゃ、悪戯しますよって意味です。だから、君が言った時、僕はお菓子を持っていないという事をアピールしたんですよ。どうぞ、悪戯してくださいってね。でも、君は分からなかった。だから、今度は僕が同じ事を言ったまでですよ」
「え?そうなの?お菓子?お菓子?って、こういう時に限って何も持ってないよ〜」
「クフ。でしょうね。では、悪戯に決定という訳です。大丈夫ですよ、夜は長いのですから、ゆっくりとねっとりと愛を語らおうでは有りませんか?ねぇ、綱吉君」

骸は楽しそうに言い放つと、綱吉の首に吸いつき始めた。手は楽しそうに、体を撫でまわしている。

うさぎ 8


綱吉がみんなの元に行くと、隣に座るのは誰だと言う事で口喧嘩が起き、結局の所バトルが始まってしまったのだが、雲雀の一撃でその場を諌められてしまった。
パーティはそのまま、酷いバトルも起こらず終焉を迎え、銘々が夜の帳の折り始めた街に散っていた。
残されたのは、綱吉とクロームと犬、千種。
綱吉は着替えを取ってくると、3人に向き直った。

「今日は、来てくれてありがとう。クロームには、色々と迷惑かけちゃったけど…」
「ううん。大丈夫。私は楽しかったわ、ボス」
「美味かったびょん。おめぇも、それ似合ってるしなぁ」
「…これで、骸様もお喜びになる」

最後の千種の台詞に綱吉は耳を疑った。誰が喜ぶって?

「…ち、千種さん?今、何て言いました?」
「何でもない。気にするな、ボンゴレ。今日は、素晴らしくおも…楽しかった」
「いやいや、何か言い掛けましたよねぇ?骸が―」

言い募るウサツナに、千種は面倒臭そうに眼鏡の位置を直しながら言った。

「もう、帰る。じゃ、ボンゴレ」
「はぁ?おっおい〜」

千種の声に、犬が歩き出しクロームもいつの間にか着替えていて普段の格好で歩きだしていた。

「バイバイ、ボス」

取り残された綱吉は、惨めな気分で着替え始めた。

「何だったんだ…今日は、笑い物にされて雲雀さんには殴られ…もう嫌だよ…」
「だから、言ったでしょう?僕と一緒にいれば、こんな目には合わないのだと」

振り返ると、そこには不機嫌な表情の骸が立っていた。確か、拗ねてて出て来ない筈じゃなかったのかと。

「な、なんだよ。びっくりする…」

ドギマギして話す綱吉に対して、骸はゆっくりと歩き出し綱吉の目の前で止まった。
頭にしているウサ耳ヘッドドレスを弄りながら、不機嫌そうに呟く。

「僕に内緒で、こんな格好許されると思ってるんですか?こんな、あられもない格好でファミリーの気を引こうとでも?それとも、雲雀恭弥の気でも引きたかった?」
「な、なんでそこで雲雀さんの名前が…」

綱吉の頬に冷たい骸の手が添えられた。そして、上向かされ額がくっついた。

「気がつかないんですか?あの、一匹狼の彼がどうしてこのくだらない余興に出てると思ってるんですか?」
「え?リボーンに呼ばれたからじゃないの?」
「君、どこまで鈍感なんですか?アルコバレーノの呼び出し位で、こんな時間まで我慢できる人間じゃありませんよ。それこそ、最初から最後までバトルが出来ると言うのなら話は別で来るのでしょうがね」
「え?だって、リボーンの事結構気に入ってるから、来てるとかだと思ってたよ。ずっと、リボーンの後方にいたし」

鈍いウサギに骸は瞼を閉じて溜息を吐いた。どうしてこうも、分からない。

「君の事を気に入っているからに決まるじゃないですか?あの煩い駄犬みたくストレートに出していないだけですよ。彼と野球少年は巧く隠している方ですよ。ま、君相手じゃ遠回しな事は通用しないですけどね」
「む、骸?」

目をぱちくりさせている綱吉をそっと抱きしめると、骸は耳元で囁いた。

うさぎ 7

綱吉は、うっすらと涙を浮かべながら着ていた服を脱ぎ始める。クロームは、一歩たりとも動かないで佇んでいる。背を向けて着替える綱吉は、ショートパンツを持って言う。

「ねぇ、これも着なくちゃダメ…なの?」
「うん。一式頑張って作ったの。だから、上から下まで着て欲しい」
「あ…は…はぁ…」

最後の希望だったチノパンですら脱がされた。最後まできっちり着ると、くるっと振り返り片口角だけ上げて笑う。

「これで、いいんですかねぇ…?」

にっこり笑うクロームは、最後の仕上げとばかりに可愛く装飾されたウサギの耳のヘッドドレスを綱吉の頭に装着させた。

「うん。やっぱり似合うよ、ボス」
「…あんま、嬉しくないってぇ」

項垂れる綱吉の手を引くオオカミのコスをしたクロームが隣室に戻ると、いち早くリボーンが気付き腹を抱えて笑った。

「ツナ、よく分かってんじゃねぇか!!2人とも、お似合いだ」
「んなぁ!!」
「じゅ、十代目〜すっげ、似合います!!最高っす!!世界一っす!!」
「ツナ、可愛いのなぁ。クロームと仲イイしな」
「沢田ぁ!極限似合っているぞ〜!!」
「ツナ君、クロームちゃんとペアなんだね。可愛いよ」
「ツナさん、言ってくれたらハル頑張ったですよ?それにしても、可愛いの選びましたねぇ。ジェラシーですぅ」
「…ワォ!!そのまんま草食動物になるなんて、君僕に咬み殺されたいの?いいよ、今日は邪魔なのもいないしね」

各々、嬉々とした言葉も有れば物騒極まりない物もある。綱吉にしてみれば、そのどれもがどうでもよく、さっさとこの場を去りたくてしょうがなかった。犬は、口いっぱいに肉を頬張りながらその見世物に一瞥をくれた。あくまで、彼の目的は目の前に有る料理だけだった。骸のいないこの隙は逃せない。千種に至っては、デジカメでちゃっかり綱吉の痴態を撮っていた。骸に後で進呈する腹積もりだ。
リボーンは、ビアンキの膝の上で笑いながら言った。

「まぁ、今年はいいもん見せてもらった。ファミリーを釘漬けにするボスってのはいいもんだぜ。まぁ、今年は合格だな」

その言葉は嬉しかったのだが、格好が格好でいたたまれない。綱吉は、ここに骸がいなくて本当に良かったと思った。この格好のまま有ったら、きっと間違いなく暴走されてとんでもない事になるだろうから。諦めて、隣にいるクロームにそっと耳打ちした。

「ねぇ、クローム。骸どうしてる?」
「…相変わらず、拗ねてるみたいだよ。ボス」

はぁ〜と溜息を吐くとにこりと笑って輪の中に入ろうとクロームの手を引いた。

「…取りあえず、楽しんどこうか?」

うさぎ 6


雲雀の攻撃をすんでの所でかわしながら、綱吉は自分が未だ普段着である事に気付いた。それで、この仕打ちを受けているのだとしたら、雲雀も攻撃するのではなく受ける側になる筈ではないかと思い、叫んでみた。

「雲雀さんも、仮装してないじゃないですか〜」
「何言ってんの?僕は、この場所を提供し、群れるのを我慢してまで来て上げてるのに、これ以上僕に何をさせたいのさ。あぁ、もういい加減アレになってよ。逃げられてばっかじゃ、つまらなすぎる」
「あ、いや、ハイパーにはなりませんって。ってか、俺はクロームさえ来れば…」

クロームと言う名を口にした途端、雲雀の顔は見る見る曇り不機嫌を露わにした。

「何だって?」
「…クロームが来れば、俺は仮装が出来るんです。彼女に、作るのお願いしたんです」
「…へぇ?」

ごごごっと音がしそうな不機嫌なオーラに、ビビる綱吉の耳に可愛いはしゃぐ声が聞こえた。女子組が、可愛い衣装とたくさんの料理を抱えてやってきたのだった。

「はひ?ツナさん、何してるですか?」
「ハル?なぁ、ここに来る前にクロームに逢わなかった?」
「クロームちゃんなら、もう直ぐ来ますよ。あの2人を待ってたみたいです」
「良かったぁ〜」

っちと盛大な舌打ちと共に雲雀は戦意喪失したと見えて、トンファーをしまうとリボーンの後ろの離れた場所に陣取った。はぁぁっと息を吐くと、へなへなと綱吉はその場にへたり込んだ。向こうでは、既に宴会が始まりつつある。

「ボス?遅くなってごめんね?これ…」

肩をちょんちょんと叩かれ振り返ると、クロームが小首を傾げながら紙袋を差し出した。綱吉は、笑顔でそれを受け取ると隣の部屋に姿を隠した。残された黒曜組は、一瞬顔を見合わせ何事もなかったかの様に、騒いでいる一段に紛れ込んだ。

カサカサと袋の中の者を出して見ると、白いフェイクファーで出来た衣装が出てきた。ショートパンツには白い可愛い尻尾付き。上に着る服は、五分丈のヘソが見える丈の物で、白いボンボン付きの部分が4つ。極めつけが、白い耳の着いたヘッドドレス。

綱吉は慌ててクロームの元に走った。彼女は、ハルと京子と一緒に寿司を摘まんでいた。彼女の格好はどう見ても。

「く、クローム。ちょっといかな?」
「ボス?」

隣の部屋に移ったクロームの前に差し出されたのは、白く可愛い衣装。綱吉の手はプルプルと震える。彼女は、ふんわりと笑うと事もなげに言ってのけた。

「これね、千種や犬がね、似合うのはボスしかいないって。私もそう思うの。だから、着てくれるよね?」

着てくれるよね?じゃない。何でどうしてそうなった?パニックを起こしかけた綱吉に、更にクロームは声をかける。

「仮装してないの、ボスだけ。本当に、怒られちゃうよ?」
「で、でもっ!!」
「…ダメ?なの?」

首を傾げて問いかける彼女の瞳は心なしか潤んで見える。綱吉は、顔を引き攣らせながら諦めて言った。

「わ、分かった!!分かったから、泣かないでよ。ね?クローム」
「…本当に?」
「うん。着るから!着ます。着させて頂きますぅ」

半ば自棄だった。

うさぎ 5



10月31日、快晴。とある廃ビルの一室にべろりと張られたポスター。
『恒例 ボンゴレ式 ハロウィンパーティ』
廃ビルの手配をしたのは、並盛を支配する風紀委員長事、雲雀だった。灰色のロンティにフード付きジップアップベストと細身のジーンズに身を包んだ雲雀は、多少苛々しながらもリボーンの要請に従った。

「これなら、何をしても大丈夫だよ。赤ん坊」
「流石、雲雀だな。おい、ツナ安心してバトれ」

その不穏な台詞に、青褪めた綱吉とは正反対に嬉々として満面の笑みを浮かべるのは雲雀だった。

「な?!リボーン、ハロウィンパーティじゃないのかよ?バトルって何だよ?」
「バカか?ただの仮装パーティなんざやるわきゃねーだろ。このダメツナが」

毒づいているリボーンの言葉にうっとり、しっかりちゃっかりとトンファーを構えた雲雀がいた。目が爛々と光り、獲物を捉えた獣の様である。綱吉は顔を引き攣らせると、後ろに数歩下がった。これじゃ、去年より悪い。じりじりとにじり寄る風紀委員長は嬉しそうに愛用の武器を構えている。

「じゅ〜だぁ〜いめ〜!!どこですかぁ〜?じゅ〜だいめ〜?」

遠くから聞こえるのは、獄寺の呑気な声だった。しかし、これに縋るしかない綱吉はここぞとばかりに大声を張り上げた。

「獄寺く〜ん!!ここだよ〜!!早く(助けに)きて〜」
「は〜い。今直ぐっ!!」

言うが早いか、獄寺は持ち前の俊敏さを無駄に発揮して綱吉と雲雀、リボーンのいる場所に辿り着く。

「お待たせして…って、てめぇ雲雀っ!!十代目に何してやがるっ」

入ってすぐに、獄寺は持っていた料理を手早く床に置くと、これまた愛用のダイナマイトを数本構えた。

「ふん。君に用はないよ。僕は、草食動物を咬み殺せればそれでいいんだ。もう、赤ん坊からも許しを貰っているしね。邪魔、しないでくれる?」
「な?!」

イイ迷惑だと心の中で叫んだ綱吉は、縋る思いで獄寺を見た。彼はきちんと仮装済みである。雪駄に着物と言う純和風の出で立ちだったが、持っている物は物騒極まりない。完全に臨戦態勢に入った獄寺に、リボーンは声をかけた。

「獄寺は合格だ。その物騒なもんはしまって、こっちに持ってきたものと一緒に来い」
「え?でも、リボーンさん。十代目が、雲雀の野郎に…」

チャキリと構えられたリボルバーにシニカルの笑いが一つ。

「おめぇは、こっちに来いってーんだよ。ハチの巣になりてぇのか?」
「いや、でも…」
「…あぁん?」
「す、すんません!十代目」

結局、リボーンの凄味に勝てず獄寺はダイナマイトを懐にしまうと、そそくさと持ってきた料理を手にリボーンの元に行ってしまった。ごくりと喉が鳴る綱吉は、もう逃げ場がない。背中は壁だった。

「ち〜すっ!!竹寿司で〜すっっ!!って、小僧持って来たぞ?お?ツナは雲雀に遊んで貰ってるのか?まったく、仲がいいのな〜」

呑気に入ってきた山本は、大きな寿司桶を何重にも抱えていた。そして、彼もまたどこで手に入れたのか中世の王子様の衣装を身に着けていた。

「山本、おめぇも合格だ。さぁ、その寿司こっちに持ってこい」
「おう。って、獄寺どうした?顔が悪いぞ?」
「…な、に言ってんだてめぇ〜!!」
「山本、それを言うなら顔色が悪い、だな」
「あぁ、すまんすまん。獄寺、悪気はないって〜」
「こんの野球バカが〜」