「僕ね、結構怒っているんですよ?今日のこの格好もそうですけど、クロームと結託していたのが気に入らない」
「う…ご、ごめんなさい」
「仲間外れにするとは、いい度胸です。どうなるか、分かってますよね?」
「いや、えっと、その…ごめん!ごめんってば。でも、言い訳させて貰えるなら、この格好はクロームと千種さんたちに仕組まれたんだよ。作ってって頼んだのは、俺だけどさ、オオカミの格好を頼んだんだよ。それなのに、ウサギがくるし…は、恥ずかしかったんだって。好き好んでこんな格好してる訳じゃないし」
「へぇ、クロームたちのせいにするんですか?流石、ボンゴレ10代目を襲名するお方ですね。汚いですよ、沢田綱吉」
「継がないってば。それに、せいにした訳じゃないよ」
「では?」
「俺が優柔不断で、人任せにしちゃったのが原因です」
「クフフ。そうですか。まぁ、いいでしょう。今日、この日に言う台詞でも言って下さいよ。そしたら、許して差し上げますよ。僕は、寛大ですからね」
「…寛大?寛大なヤツってここまで意地悪言わない、よな?」
「何ですか?沢田綱吉」
「な、何でもないです。えと、言葉言えばいいんだろ?」
「ええ」
うんうん唸りながら考える綱吉を、にやにやと見下ろす骸はウサ綱の可愛さに視線を奪われていた。細い腰に白い肌。そのボディラインをあいつらに見られたのは、やはり腹立たしい。
「と、と…なんだっけ?トリ…がどうのって言った筈なんだけど」
悩む綱吉の様子にほくそえみながら骸は言った。
「Trick or Treat?」
「とりっくおとり?」
「Trick or Treat?ですよ」
ゆっくりと言った骸の後に綱吉は片言発音でやっとのことで繰り返す。
「とりっくおあとりーと?」
にっこり笑って骸は両腕を広げて見せた。綱吉には意味がさっぱり分からない。
骸はそれも想定内の事だと言わんばかりに、更に笑う。綱吉にしか見せない笑顔だ。
「さぁ、どうぞ?」
「え?何がどうぞなの?」
「クフフ。僕はお菓子を持っていませんよ。って意味です」
「お菓子?」
「分からないのであれば、僕が言いますね?Trick or Treat?」
「?え、何??」
クフフ、クハハと笑いだした骸は、意地悪い光を一瞬瞳に湛えると綱吉の頬にキスを一つ落とした。
「では、存分に可愛がって上げましょうかね?綱吉君」
耳朶を甘噛みするとべろりと舐め上げる。綱吉の背をゾクゾクと波が走り抜ける。綱吉は焦って聞き返した。
「何してんだよ?骸。意味が分かんないって!教えてよ」
「クフフ。おバカな君に教えてあげますよ。そう、手取り足とりね」
「や、バカなのは認めるから、ヘンな事しないでよ」
「Trick or Treat?ってね、お菓子をくれなきゃ、悪戯しますよって意味です。だから、君が言った時、僕はお菓子を持っていないという事をアピールしたんですよ。どうぞ、悪戯してくださいってね。でも、君は分からなかった。だから、今度は僕が同じ事を言ったまでですよ」
「え?そうなの?お菓子?お菓子?って、こういう時に限って何も持ってないよ〜」
「クフ。でしょうね。では、悪戯に決定という訳です。大丈夫ですよ、夜は長いのですから、ゆっくりとねっとりと愛を語らおうでは有りませんか?ねぇ、綱吉君」
骸は楽しそうに言い放つと、綱吉の首に吸いつき始めた。手は楽しそうに、体を撫でまわしている。