『ボスは、優しくて暖かいの』
彼女はそう言うと、頬をほんのりと赤らめた。彼女の言う少年を、自分の目的の為に襲いかかった事もあった。
彼女の言葉を、繰り返し思い出すのは何故だろうか。
自分の手を無意識に見つめれば、酷く汚れている様に感じた。
―当たり前でしょう?どれだけ汚れた血を浴びたと思っているんですか
何とも言えぬ感情が、胸を締め付けた。
「…なっ?!む、骸?」
学校帰りの少年の手を、徐に掴み振り向かせた。頭一つ分背の小さな彼は、一瞬驚いたものの深呼吸一つで軽く肩を竦めた。
「何か用?」
「…別に有りません」
掴まれたままの腕を、軽く上に持ち上げて少年は苦笑した。
「ならさ、手離して?逃げないしさ、骸」
そう言われて手を離したが、骸は眉根を寄せた。いつもの彼らしくない行動に、少年は問い掛ける。
「なんか、あったのか?お前らしくないっつうか」
「…暖かいと…」
「何が暖かいんだ?」
君がと消え入りそうな声で応えた骸に、頭を掻きながら言葉を掛ける。これでは、チビたちと変わりないじゃないかと、心の中で思った。
「俺が?体温高いって事?」
少しズレた言葉に、骸は自嘲げな笑みを浮かべた。
「…気にしないで下さい。綱吉君」
「気にすんなって言ったってさ、お前何でそんな泣きそうな顔してんだよ?」
その言葉に、骸は酷く驚き言葉を失った。
何も話さなくなった骸に、綱吉は逆に手を繋いで歩き出した。
「お前の行動って、意味不明過ぎだよ?もうちょい、分かり易いとさ助かるけどな〜」
「…手」
その言葉に綱吉は、慌てて離した。暖かかった手が、急に淋しく感じた。
「あ、ゴメン。チビたちと良くやるから癖でさ」
照れ笑いをする綱吉を、無造作に抱き寄せた。
「おっ、おいっ!むむ骸?」
腕の中で慌てる小さな彼の、髪に顔を埋めて呟いた。
《僕を選んで。そして僕だけを暖めて下さい》
暖かな君を、僕だけのモノに出来たら、この感情に押し潰されないのだろうか。
唯、抱き締めた彼を感じた思いは骸を落ち着かせた。
ボクダケヲエランデ
キミダケヲマモルカラ
8/2 13:09の方へ
拍手&コメント有難うございます!
亀より遅い更新なサイトですが、応援して下さって貰えてて、ホントに嬉しいです。
これからも、かなりゆっくりでは有りますが、頑張りますね♪
また、遊びにいらして下さいね〜
有難うございました!