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賄賂(雲綱2)



おどおどとしている綱吉に、雲雀は簡単な判り易い言葉を言った。

「キスしてよ」
「?%#×▲○!!!」

パニックだった。群れる事も他人との接触もキライな筈の彼の唇から零れた言葉に驚いた。

「早くしなよ。出来るだろ?」
「できな…」

瞬間、殺されそうな視線が投げられた。

「…は…い…」

返事はしたが出来るはずもなく、綱吉はあっけなく白旗を揚げた。雲雀は更に笑顔で、そう凶悪なまでの笑顔をして綱吉を捕まえ自分の膝に据わらせると、薄い胸を弄り邪魔しそうな腕を掴んで囁く。

「好きにして良いってさ。だから、君に拒否権はないよ」

悪魔の囁きに、綱吉は考える事を手放した。
雲雀にとっては、最高な贈物。

賄賂(雲綱1)

朝起きると、何も見えなかった。
真っ暗闇の中、自分の手は何故後ろ手に縛られ猿轡をし、足首も拘束されているのか判らなかった。ましてや、トランクス一丁と言う格好である。
どうやら、狭い所に押し込められたのだと判るまで、暫く時間を要した。


「誰?こんなモノ僕の家に送りつけたのは」

そう不満を露わにその邸の住人は和服の袂に両腕を差し込んだまま、庭先に降り立った。

そこに置いてあるのは、日本庭園にそぐわぬカラフルな大きな箱が1つ。おまけに可愛らしくリボンまであしらってある。
良く見れば、リボンの結び目辺りに何かが差し込んであった。
宛名には『雲の守護者:雲雀恭弥殿』と、拙い漢字が並んでいた。


僕宛?いったい誰だっていうんだい


訝しく思いながらも、手紙をカサカサと広げた。そこに書かれていた文字に雲雀は一瞬目を見開き、次の瞬間には薄い笑みを零した。

手紙にはたった二行。


『お前にバースディプレゼントだ。好きにしろ。
リボーン』


モガモガと足掻いてはみたが、びくともしない。相変わらず真っ暗な環境が、恐怖心を煽り心を後ろ向きにする。

《ここどこなの?俺、何でこんな目にあってるの?誰か助けてよ。リボーン?リボーン!!》

その時、急に視界が明るくなり目蓋を閉じた。
これで助かると思った綱吉は、ゆっくりと目蓋を開けた。

「ワオ!流石だよ、赤ん坊」

そこには和服姿の雲雀が、滅多に見せない笑顔で見下ろしている。
何故だろう、綱吉は助かった気が一切しなかった。寧ろ身の危険を感じるのは、この笑顔が最凶に恐ろしく見えたからだろう。
そんな事に一切目もくれず、雲雀は半裸の拘束されたままの綱吉を抱えて自室に向った。

鼻歌が聞こえて来そうな位上機嫌だったが、担がれた綱吉は逃げ場を失った事に焦っていた。

降ろされた部屋は、綺麗に片付けられた和室だった。雲雀のイメージそのままの部屋に、綱吉は現在の状況を忘れてちょっとだけ安心した。
雲雀は、綱吉の相向いに座ると楽しそうに言った。

「君はどうやら、僕のモノになったようだよ。赤ん坊からの贈物として届いたからね」



なにぃぃぃ〜!!


目を見開き驚愕の表情の綱吉に、更にずいっと近付き顎をしゃくった。


「最高の贈物だよ。これは、この間聞かれた時の台詞通りだよね」笑う捕食者。血の気を失う草食動物。自然の摂理、食物連鎖。
雲雀はクスクスと笑いながら、綱吉を抱き寄せた。

「今、外してあげるよ。綱吉」

耳元で囁かれたその言葉は、甘美に艶やかに響く。
足の次に手を外し、最後に猿轡を外す。

「ヒ、ヒバリサン!!なんのジョーダンですか?」

外された途端にでたこの言葉に、些かむっとした雲雀は軽く睨み付けながら言い放った。


「君、最初に言う言葉が違うんじゃない?」

この期に及んで何を言わせたいんだと、綱吉が思ったのも束の間。雲雀の表情が一気に冷酷なモノに変わったのに気付いた。

「あぁ…えぇっと、誕生日オメデトウゴザイマス」

引きつりながらの棒読みな言葉に、呆れつつ雲雀は溜息を漏らした。

「ホント、君って色気がないよね」

あってたまるかっ!俺は男だと口をパクパクさせながらも反論する勇気など微塵も持ち合わせていない。
そんな綱吉に追い討ちをかける、雲雀は実に楽しそうだった。

「で、何してくれるの?綱吉」
「はい?」
「プレゼントって言うんだから、何かしてくれるんでしょ?」

何だか理不尽な要求にも聞こえる台詞に逆らう事無く、問い返した。

「何かご希望でも…?」
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