ルドルフと一杯アッテナ -3-







耳を劈くような叫び声にも、しかし沖田はひるまなかった。


「うるせーよ!」


子供の尻をバシッとひっぱたいて、愉悦に歪んだ顔を、顎を持ち上げて向けさせた神楽に見せつけた。
覆いかぶさるような態勢で、そうしながら、もう一度、空いた手で尻をぶったたく。


「ひっ!」


思いがけない折檻に、神楽の小さなお尻がキュッと硬直して跳ねた。スカートは背中の方までまくれ上がっている。


「ご主人様に従順でねェーと、お仕置きだってわかってるはずだろーが」


そんなの知らないネ! と言おうとしたが、その前に、沖田の右手人さし指が尻を撫でまわす感触に息が乱れた。


「っ、うぇぇ…ぇん……やだァ……」


もはや滲んだ涙をとどめることさえできなくて。 泣いてしまった神楽の痩身から脂汗が噴き出した。さすがの彼女も、これからこの変態にむしろこんなもんじゃないもっと酷いことをされるのだと思うと、心の底から恐怖が湧いてきた。
いくら気の強い神楽でも、生理的嫌悪ばかりがつのるこの仕打ちは、泣きたくなる。
嘘をついてからかおうとしたからって、酷すぎる。
神楽は尻を掲げられた破廉恥な姿のまま、掠れた声を泣き出した。


「しないで……しないで…ヨ……っ…しちゃ…やだァ……」


何を? とは聞かずに、沖田はこの生意気な獣の娘を、とうとう自分の手で泣かした悦びに震え浸った。 柔らかい尻肉の感触はショーツ越しにも手に吸いつくようで、うっとりとなる。夢にしてはいやにリアルだったが、実際はそれ以上なのかもしれない。 本当に男には毒な肌だと、その歳でこんな魔の皮膚をもつ美貌の少女に心底から同情した。


───可哀そうにねィ…。


本人にその気はなくとも、どう足掻いても男がほっておかない娘だった。 子供だろうが犯罪だろうが関係ない。 こういう魔を持った餓鬼は、大事に囲われていないとすぐに自分のような男の餌食になるのだ。 そうして不幸を背負って自ら悲劇の罪に染まる者もいれば、逆に男を手玉に取って女ドン・ファンとして生きていく者もいる。
まったくいやになるほど自分に好き勝手される彼女は、辱められていながら、どこまでも神々しく沖田には映った。
尻を撫でられる気色悪い感触は、いつしか神楽にも妖しい感覚をひろげていく。
それでも、おとなしく変態行為を受けるわけにはいかないのだ。
れっきとした警官のくせに、いつまでもこのふざけた冗談をやめてくれない沖田に、神楽は恨めしく肩を揺すって、鼻をすすりつづけた。
この男の前でこんな失態を晒すだけでも万死に値するのに、涙は後から後から溢れて止まらない。


悔しい…。


泣かされたことも。 許可なく触られていることも。 いま、怖くて仕方のないことも。
酷い。 酷いヨ…!
結局、自分の蒔いた種であっても、自分はまだ子供で、沖田はもう大人だ。いつこの尻を撫でている無骨な指先が、自分の最も隠していたい秘密の部分に触られるかわからない。そんなことされたらもうお嫁にいけない。


酷い。酷い。酷い。酷い。酷い───



「尻ぶったたかれて泣いて……、撫でられて悶えるなんざァ…、M女の証拠じゃねーか。  ほら…」
「やだァ……ふェェェ…っ…」


本気でしゃくり泣き出した少女に、沖田はまたゾクゾクとした。 わかっていたことだが、自分は真性のSだ。 泣かれ、嫌がられるほど、無理強いしたくてたまらなくなってくる。
両手をうしろ手に括られている神楽は、畳に顔を押しつけて身悶えしているが、それも段々疲れ果ててきている。 汗の浮いた稚い泣き顔は、誰にも見せたくないほど愛くるしい。
だがこのままぐったりと疲れきったところを犯すより、多少抵抗されるぐらいがまたサディストの好みだ。
尻から手を離し、湿った内腿の魔皮を爪先でくすぐると、また神楽が絶叫した。
汗まみれの幼い肢体が、必死でイヤイヤしている。それを見て、沖田は激しく尻を打ちのめした。


「やァっ! やァァ! 痛っ!痛いヨ!! やだァァァ!!!」
「じっとしてなかったお仕置きでェっ! 身動きできねーぐらいに、括られたいってわけだな」


もう一本の赤い縄ロープを出した沖田は、途中を縛って縄の玉をふたつ作った。その間に逃げ出そうと這い出す神楽に、また尻を打ちのめす。 神楽が割れんばかりに泣き叫ぶ。
玉の感覚が少しだけあいているそれを、胸にまわっているロープにその縄を繋ぐようにして、縄をまっすぐに股ぐらへと下ろす。要するに股縄の要領だった。何もわかっていない神楽は、わからないだけに不安で、沖田に顔を向けて口をパクパクさせていた。 暴れても、泣き叫んでも、やめてくれないのだとわかって、哀願しようかどうしようか迷っているのだろう。泣き濡れた美貌が、胸を焦がす。
憐れだった。
無知で無垢で、人をおちょくることにかけては天才的にふてぶてしいくせに、今は犬猿の仲である沖田の前で、ボロボロに泣いている。
こんな憐れで、可哀らしい生き物は見たことがない。
沖田は嗤いながら幼い股ぐらから尻の方に縄をくぐらせようとした。
どうせ夢ならとことん破廉恥なことをしたい。
ぐっちゃぐちゃにして普段なら絶対できないようなことをして、神楽を無理やりでもいいから「好きだ」と言わせてみたい。
夢でもなんでもいい、叶うのなら、何でも……
本当に憐れなのは自分だろうということを沖田はちゃんとわかっていた。わかっていながら、とことん辱めるのだ────


「夢じゃなかったらいいのにねィ……」


わくわくしながら縄をクイッと引っ張った。


「夢なのか、コレ……?」


突如、降ってわいたように背後からかかった声に、沖田はハッと振り向いた。


土方と山崎が呆然と突っ立っていた……。


「え…?」


奇しくも三人揃った声に、薄暗かった畳の間に差した一条の光を求めて、神楽の悲鳴じみた泣き声が空気を切り裂く。


「そ、おまっ……総悟ォォォォォオオオオッ!!!」


土方のかつてない最大級の怒声が屯所中を轟かせた。







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06/20 17:16
[銀魂]




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