メメント・モリ







勝手に生まれ出て、奔放に好きなだけ生き、
無尽蔵の怒りを持って死ぬ───



なにか不幸で、不安で、焦立たしくも冷めた熱狂のようなものを感じさせずにはいない、その曰くいいがたい世界。
それを偏に『独楽』というのなら、あの男が率いる闇を一目見た者は、容易にそれから逃れられなくなるにちがいない。時代の趨勢とはまるで無縁のような、反時代的とすら見えるああした生き様は、いったいどんな過去によって生みだされたのか。


それにしても、と神楽は思う。年がら年じゅうひたすら世界を嘲笑い、すべてを壊すことにのみ駆り立てられるというすさまじいまでの執念は何なのだろう。
あの男の対象は、基本的にきわめて狭い男自身の生活世界の目に見えるものに限られている。壮大な構想画のようなものは実のところいっさいない───のではないかと疑ってしまう。過去の先人たちの怠慢を断頭にした、男自身「世直し」と称する引用ともパロディともあるいは綺想画とも呼んでいいような計画群を一方に置いて、あの男はただ自分の生活する空間のなかに去来するものだけに眼差しを据え、それを『世界』に定着させようとする。ただ嫌っているのだ。何もかも。
自己の誕生の不確かさ、根拠の再発を、まるで空白恐怖にとらわれているかのように、ひたすら破壊することで埋めようとする。
あの男の場合は、誰かのように、それが、「平和的」復讐と手を結ばなかっただけだ。
いずれにせよ、壊さずには、破壊せずにはいられない、そうしたオブセッションこそがあの男の最大の特質だなんて…。



無器用なやつ…──






「……勝手にすればいいネ 」



あの男を『様』呼ばわりする女みたいなこと、私は絶対言ってやらない。





メメント・モリ
(死を忘れることなかれ)










fin


10/04 20:50
[銀魂]




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-エムブロ-