少年群像








恋をした。


世界が鮮やかに色づくような恋をした。
まるで学生の時のような。
違う、学生の時でさえしなかった少年のような恋をした。
同じ学び舎で、同じ季節を過ごし、同年の生徒のように彼女をその目で追う日々──。
これが恋なんだと自覚したときはずいぶんと愕然とした。
俺だってそれなりに歳はとっている。
考えてみれば、自分の学生時代はどうだったかと思い起こしたとき、具体的な恋愛に照らし合わせる経験がひどく乏しいのだと気づいて初めて落ち込んだ。
青い春とはあまり縁がなかったのだ。男とツルむほうが多くて、それはそれでよかった。
だいたい、俺の周りのヤツらは、女にゆるいヤツや特殊な趣味のヤツばかりで、傍から見ているだけでも面倒だったし、大学に行ってもなんとなくまともな恋愛ひとつせず、それがおかしなことなのか、寂しいことなのか、自分でもあまり気にせず深く考えたこともなかった。
硬派を気取っていたとか、女に興味がなかったわけじゃないが、今も昔も女にかぎらず人を好きになるってことは簡単なようで難しかった。
初めて付き合った女は、確か大学一年のときだ。サークルの合コンで出会ってなんとなく告白されたヤツで、それなりに有頂天にもなったが、あっちから言い寄ってきたくせに3ヶ月もつづかず別れてしまった。
あっちの言い分では、俺のだらしない態度だとか、俺のずるい言い草だとか、とにかく俺に不満があって別れたらしいが、俺と別れたすぐ後にもう他の男を見つけて付き合っていたのだから、これが今どきの恋愛? なんて俺が冷めてしまったのもうなずける。それなりに初めての女だったわけだから、未練がましくなってもおかしくなかったが、最初っからどこかで熱くなれない自分も理解していた。
そんなわけで、その後も多少の付き合いや別れを経験してきたが、どれもこれも世間でいうところの恋愛とはかけ離れた自堕落なものだったと、後になってこうして気づいた始末だ。
よくいう小説やドラマの世界なんて自分には関係ないのだと思っていた。
恋をするのは女、恋に夢みるのも女、恋愛にかまけてすべてが恋や愛だけで廻っているのも女だけ。そしてそれに振り回されるのが男。
男が女のような恋をするなんて信じられない。
ましてや少女のような恋を。


この歳になってするようなもんじゃない。
そんなもん、しては終わりだ。ダメだ。
ダメだダメだ。ああダメだ。


そう自ら言いきかせては、どうしようもなく身を焦がしたこの三年間。
それもあっという間だった。


あっという間。


明日で終わり。






恋をした。

世界が鮮やかに色づくような恋を。





キミだけを追っていた。
(この三年間)










fin


more
03/08 13:49
[銀魂]




・・・・


-エムブロ-