背中にあたった熱い手のひらが神楽のからだを固定していた。
余裕の表情を浮かべた銀時に見おろされて、浅く息をつく。
こうなったらもう・・・逃げられない。
この意外に束縛したがる腕に絡め捕られていることに、苦々しさを感じるのは……、ここが狭く息苦しい押入れの中だからだ。
そうでなければきっと、もっとすんなりと身を預けるのに…。
いずれにしても銀時はすでに、神楽の心情などはおかまいなし。
───神楽ちゃん
と、楽しげな口調でせまってくる。
───どこから可愛がって欲しい?
いやらしさに満ちあふれた顔と台詞はもう…ホンっト正直、保護者とは名乗って欲しくないくらいだ。サギだサギ。
よけい腹ただしさを覚えたが、
でも彼にならどこに触れられてもたちまちグダグダになる自分は目に見えている。
「……」
神楽はプイっと目をそらした。
それでも答えを待つ銀時の視線は…じっと注がれているままだ。
仕方なく、ゆっくりと口を開いた。
「すぐ……イッちゃわない、ところ……」
そう、こんな狭い空間で息も絶え絶えにさせられたら───熱くて死にそうになる。
そんな意味を含ませて言いながら目線を戻してみると、銀時はきょとんとしたように神楽を見つめ返し、次の瞬間声を立てて笑いだした。
その声の高さに神楽が思わず伸ばした手の先が銀時の上唇に当たった刹那、彼は自分の手を神楽の唇へと伸ばしてきた。すでに汗ばんだ指が唇に押し当てられて、神楽のほうは逆に銀時の唇から手を離してしまう。
『そっか、そっか…』
にんまりと口を動かす、まるで駄目な男が見えた。
その声は優しく、でも確かに得意げな響きを孕ませて続きの言葉を紡ぐ。
「焦らされるのが好きなんだ、神楽ちゃんは」
唇を制したままの一本の指は、その言葉に反論を許さなかった。
もちろん──…
やがて指の代わりにそこに強く押しつけられた唇も───。
fin