来世は黒板になるから







「……んなこと…気にしなくていいだろ」
「うっ…でも……初めてだから。……恥ずかしいし…」
「……マジで?」
「…………」


───────っ!なんだなんだなんだこの会話はァァァァ…!!何が「マジで?」。オイ、うわずってんじゃねーよ俺の声っ!でも神楽が可愛くてしぬうううううううう!!!


ふだん暴言ばかり口をつく教え子が、妙にしどろもどろにデレるのはこっちにまで影響をおよぼす。
恥ずかしそうにむっつり黙りこくった横顔は、くちびるをわずかにとがらせた可愛いもの。そこを凝視してしまうのは仕方がなかった。
大人な、自然な、それこそスマートに、事を運ぼうとして失敗した男(しかも教師)としてはクソ恥ずかしい…。
でも、神楽が、「歯を磨きたい」なんて言うから……思わずピタッと止まってしまったのだ。
しかもその唇が、まだキスもしたことがないと恥ずかしがる。なんとなくそうじゃないかとは思っていたが、おずおずと告白されて、内心ひどく舞い上がってる自分がいる。これから先が思いやられるというのに、どうだ、この撃沈っぷり。


『じゃあ、もしかしてまだアレもコレもしたことねーよな?』


それこそ聞けねェェェェ!


『…ぅ…残念アルか?』
『全然残念じゃねェェェ!』


思わず妄想の中なのに下品な声をあげてしまった。驚きよりなによりまだじわじわと喜びが勝っている。


───女子高生の三人に二人は処女……というし(まじかな?)、高2になったばかりの神楽が処女であるのは確率的には全然ありえない話じゃない。いや、むしろそうでなかったら嫌だとすら思ってた。ぶっちゃけね。あったら泣くわ俺。処女とのセックスは正直経験したこともないが、『面倒』だと思わないのはやはり本気だからだろう。
神楽は俺の声の調子に、なんだか楽しそうにエヘヘと笑う。ファーストキスはおろか、まともに男子と付き合ったことすらない女子高生。唯一聞いていた話では、


『……幼稚園の時、太極拳の先生と、たまに帰る時に手を繋いでもらってたアル。 あれも男性経験の内アルか?』


という程度で (いやいやいや程度の問題ですらないですから!)
それ以外は、


『あっちの中学は女子中だったから、男の子と接する機会とか全然なかったヨ』


ということ。おまけに。


『パピーは私がちいさい時から忙しくて、今も直接会えるのなんて年に2,3回アル。兄ちゃんは物心ついたときには家出してたし…』


ということで、「父親や兄弟と風呂に入ったことがない」 らしい。
いわば生活の中に男の匂いがほとんどしない環境で育ってきたのだ。
しかし、それにしても神楽の見た目は異様に可愛い奇跡に入るし、ちょっとズレてるというか天然なところも女としてはヤバい。
なによりもその無防備な性格だと、つまらない男にさっさとヤラれてしまっていても不思議はない……いや、そういうことがなかったからこそ無防備なのかもしれないが。


きっかけとしてはタイミングを外した。今もぐずぐずしてるのが何よりカッコ悪い気がしないでもない。が、結局、まだうずうずと歯を磨きにいきたそうな素振りを見せるので、神楽のその態度が 『無邪気』 とは違うものだとわかっていても、その想いはとても可愛らしかった。




うーん、、、もう少しジラしてみても面白いかもしれない…。











fin
一から百まで愛してください



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02/06 18:30
[銀魂]




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-エムブロ-