ふわりとした風が、髪を梳く。
冬のような剣呑な冷たさのない暖かな風。
ふと見上げてみれば、草木の蕾が色づき始めていて、来るべきその日のために着実に時間は流れている。
そうなると、やっと春が来たなんて溜息をついたり、気が早い人たちはこぞって薄着をし始める。
まるで、冬なんて無かったみたいに。
私はといえば、一人眉をしかめていつものようにそんな人達を見送る。
春は好きじゃない。
愛しく(かなしく)なるから。
いつだって。
去って行く冬が、私には何よりお似合いだ。
きっと
気づいたときから、この気持ちは終わりに向かっていくべきだったんだと思う。
ただ、昨日よりずっと恐ろしい。
銀ちゃんは知らないふりをしてくれるだろうか。
いつでも、そんな日が来たら、私はきっと泣いてしまうから。
彼さえいれば世界は廻る
(そう思っていた遠い日はずっと色褪せないまま)
fin
いっそ、生きていけなくなってしまえばよかった。
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