地球儀のスライス







私を愛していようと嫌いだろうと
あなたにこんな私を救えないのよ、ベイビー







少し、だらしなく開いたくちびるをアップで眺め、神楽はこんなふうに誰かを通して、地球全体にキスをしてやりたいと思う。
その文句は彼女に似つかわしくなかったが、意地悪そうに笑うあの顔にも似つかわしくなかった。
こんなふうにすべての男たちを移り歩き、男たちを通して、地球全体にキスをしてやりたかった。


好きだ、可愛い、きみは特別だ、といくら言われても、彼らの愛のまなざしでは神楽を慰められないだろう。
愛のまなざしは神楽をいっそう引き離して孤立化する。
彼らを征服する必要は神楽にはなかった。最初の瞬間から彼らは征服されたのだ。
だから、彼女を振り返る?




ふたりは人気のない廊下に引っこんで、何も言わずにキスをする。
人生ずっとちゃんとしなくてはと思っていたけど、そんなのもうどうでもいい。
彼の反応も最初から嫉妬だ。
彼は口を開け、神楽の口のなかに舌を押し入れた。なかに見つけるものはなんでも舐めてやろうという気持ちなら困る。
神楽は甘いものなんて持ってない。
ただ彼女はずっと前から、この教師の自尊心をくすぐるのは、慌てて同意することではなく、驚いてみせることだと知っていた。


こんなふうにすべての男たちを移り歩き、男たちを通して、地球全体にキスをしてやりたかったのだ。


最初から神楽のほうが強く、男たちのほうが弱かった。
その不平等がふたりの愛の基盤に置かれている。
正当化できない不平等、公正ではない不平等。
彼は年上だったから、より弱かった。


神楽に必要なのは、今は愛のまなざしではなくて、共感でもなく、選択でもない。
優しさも礼儀もなく、宿命的に、避けがたく注がれる、見知らぬ、粗野な、貪欲なまなざしの氾濫だ。


そういえば、この人と自分がこんなふうにキスをしたことが一度もなかったのに気づく。
神楽はこんなふうに彼を通して、地球全体にキスをしてやりたいと思う。


こんなふうにすべての男たちを移り歩き、男たちを通して、地球全体にキスをしてやりたかった。




What The Hell
(そうね、こんな私があなたを混乱させるのね。)










fin
地軸もきみに折れ曲がる



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07/10 02:00
[銀魂]




・・・・


-エムブロ-