トルソーとお茶会







男と女が、皆そうなんだなんて思わない。


でも、私にとっては銀ちゃん先生だけだから、先生しか知らないから、それが当たり前だと思っていた。








「日本の男に、メイクラブのロマンスなんて求めるだけ邪道よ、邪道!!」


なぜにこういった話になったのか。


放課後のミスドで、女ともだち数人が集まって繰り広げる話題といえば、大抵オトコの話やおしゃれの話にかぎる。最近、新しい彼氏ができたとか、興奮気味に話しはじめた阿音の愚痴を聞きながら、神楽は耳ばかり年増になっていく自分を、もはや銀八が呆れたように心配しているのを思い出していた。
あまり深く考えず大胆な毒舌を吐く神楽だが、じっさい小学生のガキがはやし立てる感覚でそれらを使っているのは、誰の目にも明らかである。実のところ、3Z一天然で通っている。
そんな初心な神楽に、こうして余計な知恵をさずけるガールズトークは、時に新たな発見を神楽にさせ、新たな”しつけ”を銀八には与えている。


「ほんともう最悪!!」


阿音いわく、今度の彼氏はとんだ見掛け倒しだったようだ。
エッチにもっていくまでの雰囲気作りは最悪だし、ヤッたらヤッたでアフターケアもなってない。最中はもっと最悪で、キスは下手だしすぐ挿入れたがるし自己中だし、とにかく、全然酔えない!!!・・・らしい。


「アンタそれ、ただ相性が悪いだけとちゃうん?」


などと花子が茶々を入れていたが、阿音は、ただむこうにあまりに才能がないのだと言い張っている。
そこで上の会話に戻る。



「だいたい日本の男は、どいつもこいつも『メイクラブ』って言葉知らないんじゃないの?!」

「知らんの普通ちゃう」
「アァ!?」
「死語やで、それもう」
「うっせぇぇぇ!」


知ったかぶり、大人ぶりたくなる多感な年ごろだ。大人になったとき振り返ると、顔から火が出るようなことを言っていたと思い出すのかもしれない。


「セックスもメイクラブも区別がないのよ」


そう笑って、阿音の愚痴につきあうのは、3Z一大人な常識人のおりょうだが、少し周囲を気にしたのを見て、神楽もこれは恥ずかしい会話の部類なのだとちゃんと理解する。
じつは皆には内緒にしているが、神楽は担任の銀八と付き合っている。というか同棲している。当然キスもしているし、最後までいっている。
ただ、阿音の話のように恋人に対して幻滅したり、ましてやそっち方面での憤慨は一度もない。
あの普段からだらしない男への不満がまったく無いというわけではないが、こと事がそっちに及ぶと妄信的に与えられるしかなかった。
知らなかったといってもいい。
全面的に絶大な信頼はおいているし、一方的に当初から愛された。
ただお互いが真実求めあっているのだから、ありふれた表現とはいかない。
何が正しくて、何が間違ってるのか、それは色々だろうけど、今のところ不満が全くないというほうがおかしいのだろうか?
誰にも相談できない疑問なので、神楽は帰ってから、これまた銀八に素直に聞くしかないと思っている。
そういうところが一途に彼を打ちのめし、また途方もなく性懲りもない”しつけ”に向かわせるわけだが、それだって神楽はあまりわかってないし嫌ではない。


『メイクラブ』


相変わらず阿音はグチグチ愚痴っている。
それに苦笑いのおりょうと花子が合いの手を入れ、神楽は大量に積まれた割り勘のドーナツを口に運ぶ。
程よい甘さの生クリームが挟まれたそれは、銀八の好物のひとつでもある。
帰りにおみやげとして買って帰ろう。
極度の甘党な彼だけに、チョコレート味の方がいいだろうか。
くすりと神楽は笑う。


その言葉の響きと、彼の甘さがいやにマッチしているなと、こんなところで気づいて。
ああそうか、となんとなく納得できてしまった自分がおかしかった。


誰もが銀八のその時の表情や声、仕草を知ればおどろくのではないかと思うぐらいだ。


だらしない性格はクラスの女子には可哀相だが不評。
でも神楽だけは知っている。


そのだらしなさも、どこまでも甘い。



彼の『愛』は
今のところ非常にロマンチックだ。




トルソーとお茶会
(誰にも教えてあげないんだ)











fin

神楽ちゃんにだけ、甘いんだよ。





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07/09 01:50
[銀魂]




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