のんびりとした長閑な昼下がり。
やけに神妙な空気をかもしだす小娘は、どうやら大まじめにそんな事を考えていたらしい……。
自分の中のありったけの無垢をかき集めても、たぶん出てこないだろうおそろしく繊細な純度。
「ねぇ、銀ちゃん…」
「なーに」
「私たちって、順調アルよね?」
「……へ?」
「まがりなりにも───まるでダメな天パの玉砕覚悟の告白から入ったわけだし。 考えてみればスッゲー純愛アル」
「…いや、フツーじゃね」
「で、キスもしたアルよね」
「……」
「キス。ベロちゅーじゃないほう」
「あ、あぁ。…そだね」
「で、すぐにはエッチできなくて、何ヶ月も銀ちゃんがモジモジしてた」
「っしてねーよ!」
「じゃあモンモンとしてた」
「……。」
「それからついにって時にうまくいかなくて、その後も何回か銀ちゃん、失敗したアルよね」
「……え? イジメ?これイジメ? 銀さんなんかした?」
「で、一週間前、私たちはとうとう姦通できました、と」
「あらためて漢字にすると嫌な言い回しなんだけどォ!!」
「ねぇ、銀ちゃん」
「あ゛ぁ?」
「私たち……これからどうなるアルか?」
「……は?」
「…これからヨ。もう最終段階まで行っちゃったアル。これから、銀ちゃんと私はどーしていけばいいアルか? どうなっちゃうネ?」
やけに神妙な雰囲気をかもしだす小娘は、どうやらまじめにそんなことを考えていたのだ。
AもBもCもすませて、それ以上の関係。
そこからまたプラスして愛情を育んでいく方法など、自分にしたって、神楽と同じように未踏の地に等しかったが、その拙いまでの真剣さをひどくいじらしいと思った。
幼いからか、それでなくとも少しずつ大人になりつつあるからか、小さな恋人の発した不安は…──そう、これは確かに 『不安』 というものだ───銀時の胸に矛盾した興奮さえ生みつけた。
興奮を覚えながら胸がふさぎ、うずくような愛と切なさのいりまじった感情に同時にみまわれて、銀時の心は甘く痛んだ。
まるで胸の古傷が口を開けたかのようだ───甘く酔わせるような不安な傷が。
「………お前は、どうなって欲しいんだよ」
折り合いがつける範囲まで応えてやらないこともないと、銀時は少女を愛することが苦痛でもあるかのように言った。
宝石箱
(きみはどんなカタチの愛が欲しい?)
fin
宝物を失ってから気づく人間にはなりたくない。
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