きみだけが聞き取る秘密







銀時は判りにくい。本当に判りにくい男だ。
惚れるべくして惚れた相手だったが、まだ十代も前半だった小娘の自分が初恋に選んだ相手としては難関すぎた。
いまでこそ少しはまるくなってくれたが、あの頃と変わらず意地悪で誤魔化すのが上手くて──
そのくせ不器用で臆病で依怙地でどうしようもない。
でもこんな小難しいオッサンへの恋心からまったく覚める様子がないのだから、
これほど苦しんだこともなかった。
何を言っても軽くあしらわれるし、行動で示してもとぼけられるし。
示す以前にぶっちゃけダダ漏れだったけど…。恥を忍んでガラにもないイベントに乗っかったことは記憶に新しい。
なのに、はしゃぐのに昂ってどんとストレートに言おうが余裕でなだめられ、こっちが逆切れしようがイライラむくれようが焦ってようが悩もうが──平然と綽々な態度を取られつづけた。
軽く見られるのも本気にされないのも全部自分が子供のせいだと思いこんでいた頃もあった。
早く大人になりたくて足掻く気持ちと、たとえ大きくなったからといってどうなるわけでもない希望のなさに、
『コンチクショー!この神楽さまだって弱気にもなるネ!!』
と、失意と諦めがチラついた日々。
それでも、向かう気持ちを止めることはできなかった。
時に迷惑なほど全身から好きだと訴えるしかなくて、溢れる想いに眠れぬ夜を過ごした。枕を涙で濡らしたのも数えたらキリがない。

この恋が叶わないなら。

たぶん、一生自分は誰かを愛することはできないとまで思いつめて。
いっそ死んでしまいたいとも思った幼いあの頃────。
それに終止符を打たれたのは。
ある日、なんの予感も前触れもなく返されたガツンとくる一言だった。



『十六歳になったら、銀さんに全部ちょーだいね。』



いつもの死んだ魚のような淀んだ色ではなく、深い真摯な色合いに応える瞳。
だからそれがたとえ一時の口から出まかせであろうと、あしらう口実であろうと。
私はそれを一生夢みてやろうと思ったのだ。

たとえ十六を過ぎても。
永遠にこの男にくれてやろうと思った。



この恋は永遠
(だから貫ける強さが欲しかった)










fin
よくよく考えたら、一度だって拒否られたことはなかったんだ…。


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12/23 23:10
[銀魂]




・・・・


-エムブロ-