きみのいない未来だけ







オレがつき合う女に、お前はいつもケチをつけるよね。
そしていつも同じパターン、同じことの繰り返し。
それにしてもお前の気性はオレのと同じくらい悪いよ、お前はオレと全く同じだ。
愛のことになると、まるで残酷になる。


「フン、今度も美人アルナ」
「満足してるよ?」


彼女はお馬鹿で、お前のように綺麗だけど。
お前のようには美しくて不細工じゃない。


「私のように」
「うん」
「私を求めてるアルか」


お前とは正反対のビーチガールと──
今年の夏は海で大いに楽しんだよ。
お前を今は求めてない。


「兄ちゃんは、いつもそうネ、昔の私たちを追い求めてるのヨ」
「アイツと出逢う前の?」
「アイツ…?]
「知らないフリはよしなよ」
「どして、そんなに怒るの?」


だって彼とセックスしたくならない?
どうなの神楽。


「好きなくせに。気まぐれな私も好きなくせに」


もしかしたらオレたちの関係は、心配されるほど狂気じみてるわけでもないのかもね。
それが気まぐれでも壊れてても、完璧だった頃なんて一度もないんだから。
そういう現象なんだ。
オレにわかってるのは神楽、お前を愛しすぎて離れることなんてできないってことだ。
お前のせいじゃない、オレのせいだったんだって。
今ならわかる、オレたちが言った言葉、したこと、そんなつもりじゃなかったんだってホントはお前ならそう言えるのにね。
たぶん“今”のオレなら、アイツと寝ても平気だよ。
しばらく邪魔する気なんてないね。
よく分かる。
オレも同じだから。
お前と彼が毎晩 愛し合う声を聞いても──
オレはきっと幸せを感じるよ。


自分が酷い男なのはわかってる、もしお前が永遠に離れようなんてしたら…
次、次なんてないんだ。
オレはほとんど息もできなくなるほどそれが好きなんだ。
お前を傷つけるのが好きなんだ。
お前といれば段々息が苦しくなる。
息が詰まりそうで───待って、どこ行くの? そっちは台所じゃないか。


わかったよ…。
次怒った時にはオレは自分の拳を壁に当てるから。






『うん、、それで容態は?』
『        』
『……ふ〜ん』
『     』
『元気にしてるの?』
『       』
『アハハ、行かないよ』
『     』
『うん…じゃーね。しばらく預かっててよ──オレのじゃじゃ馬。』


ブチッ・・・


妹の自殺未遂から半日後、案の定電話がかかってきた。
ベッドスタンドをつけると、横で寝ている女が小さくうめいた。
ウトウトしたまま…
そのまま明け方に起きた。
だってアレはもう昨日のことじゃないか。
昨日はもう終わったんだ、違う日だよ。
壊れたレコードが永遠に繰り返すように。


『──包丁を離しなよ……離すんだよ、神楽』
『嫌アル』
『バカはよしなよ』
『もう生きていたくないアル! ウンザリよ。生きたくないの、分かる?』
『わかるわかる』
『心臓をブッ刺すアル』
『わかったわかった』
『もう耐えられないアル──』
『神楽…』
『嫌アル』
『ちょうだい、包丁返して』
『嫌!』
『お願い神楽、手をこっちに。愛してるよ』
『嫌!!』


ホントはね…
アイツはお前に手を出せないよ。
お前のためにも良くない。
だって、オレを殺しかけたろ?
あれは・・・
些細なことかな?
お前が彼女たちを疑うのはオレの恋人だからだ。
でもオレがアイツを信用するのとはちょっと違う。
違う?
オレはお前と離れるとしばらく自分を見失うよ。
女を断つとお前に誓いながら──
一人じゃなくて数人の女といい仲になる。
それもどこぞの観光客なんかとさ。


悪かったよ。遊びに疲れたら、ただお前に戻ってきて欲しいだけ。
平和で幸せな日々はすぐにお終いだ。
お前もオレも満足を知らない子だよ。
満足できないんだ。
慢性的な欲求不満。
治らないビョーキだね。
あ、ビョーキは言いすぎかな?
本気で愛し合ってはいるからね、オレたち3人とも。
お前は──
彼と2人一緒にしばらく幸せな時を過ごせた。だろ?
お互いに尊敬し合えた。
愛に満たされた。
だろ?
でもそれだけ。


そう、最初から分かってる。
数週間オレから離れて冷静に考えたって変わらないさ。
彼もオレも、お前を救える人間じゃないってこと。
あきらめなよ。


自分が酷い男なのはわかってる、もしお前が永遠に離れようなんてしたら
次、次なんてないんだ。
謝ってるけど、自分でも嘘だってわかってる。











fin

たとえば、一口の冷たい水、空への一瞥、一度の愛撫。 きみのいない未来だけ。



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09/14 20:33
[銀魂]




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