女神の火薬庫から浴室まで







白眉な陶器の膚はうっとりとするほど滑らかで、やや人間離れした美しさにぞくりと指先が痺れる。
男にいたってはそれだけで目に毒だろう、と妙は思った。
関節の陰になる部分でさえ、仄白く光るような光沢を与えている。
水滴をしたたらせる思春期の身体。
頼りないほどか細いなかにまろびる柔らかな萌し。…幽かな…色気。


( 女の子の身体というものは、こんなに綺麗だったかしら。)


濡れた鬣(たてがみ)、唇、膨らみかけの乳房の先端、割れ目のひずみ。
どれも透きとおるようなピンクの美しさに、否が応でも目は惹き寄せられる。
女であろうと子供であろうとなぜか胸がドキドキした。
異様な感覚。
その見かけ、神々の造形におよび、素材の上質さ───。
まるで……ちいさな神獣のようだ。
痩せすぎに見えないのは、その冷たさをまとった肌の質感からか。
こっくりとした純白の肉が、均整のとれた細い骨格に艶やかにのっている。
丁寧に、丁寧に、神楽を絹のタオルで洗っていく妙は、指の爪先から足先まで、ほとんど奉仕するようにゆっくりと清めた。





「…あ! 姉上遅かったですね。 あんまり神楽ちゃん、長風呂させるとのぼせちゃうから心配してたんですよ」


湯上りの妙と神楽が戻ってきたのを見て、居間にいた新八が声をかけた。


「あれ…? 銀ちゃん?」


妙に貸してもらった蓮の葉の浴衣を着た神楽の顔色を、チラリと見て、銀時はというとまたテレビに目を移す。
女だけのお泊り会さえ許可がおりず、じゃあ…お風呂だけという条件で、妙が神楽を久しぶりに招いた志村邸に、なぜ銀時まで来ているのか。ちゃんと夕方には帰すと言っておいたのに…この男は──…。
妙はいささか不機嫌にわが家に居座る銀髪の男を睨んだ。


「どうして銀さんがいらっしゃるんですか?」


妙の吝嗇を押し殺したような言い方に、銀時は今度はだらしなく振り向く。
そのいつもどおりの顔色を、真っ青にしてやろうかしら。
なんだかこの上なくこの男が憎らしいので、妙は湯上りの火照った神楽を炬燵に入らせ、自らもその後ろに陣取り、綺麗な薄紅色の鬣を梳きはじめた。


「そういえば、もう冬だというのにまだ蚊がいるんですねぇ…」


手櫛で冷ややかな髪を撫でられ神楽はおっとりとしている。
妙の言うことは大抵聞くのだ、この仔は。
それこそ銀時と二人っきりの時は何をされているのだと思えば、複雑な思い上がりだが。


やっぱり、心穏やかではいられない。
先ほど風呂の中で見た、美しい少女のカラダに出来た不必要なあざが物語っている真実。

…左胸の下。すもものような乳房と肋骨の境に、浮き上がるように滲んでいた紅色のそれ。まだ真新しい、それ。
瑕ですらすぐに塞がるこの魔の皮膚に、まるで数時間おきに付け足しでもしているかのように───。
神楽自身に身に覚えがないのだとしたらそれこそ大問題だ。




「警察でも呼びましょうか」



うっそりと囁いた悪意をこの男はどう取っただろう。
湧きあがる微笑の裏に、アンモラルな悪の華が咲く。










fin



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02/13 22:20
[銀魂]




・・・・


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