愛とよんだら美しくなるね







「────…っ」


…そうだ。これはちょっと病的ないかがわしさだと思う。正常ではないと、思う。
薄紅色の髪より一段と濃い色の睫毛が大きな目の周囲にびっしりと生えそろっている。マッチ棒でも数本乗せてしまえるんじゃないかと思うほど密度のある、長い、長い睫毛──、その中に嵌め込まれた宝石のような青い瞳。そのまなざし。
その透きとおるような冷たい青さと、ほんのり色づいたような感覚に陥る睫毛の桃色。そして病的なほどの白い肌。
その目元の対比を見ているだけでナニか─…
変な気分になりそうな……まったくもって落ち着かない症状に見舞われる。


たぶん、これは正常ではない。
きっとオカシイ───。


コレが持つ奇妙ないかがわしさ。端的なうつくしさ。異端なもの。
少女の幼さを自覚するよりも、息を飲んでしまうようなそれらに何かを見失っていきそうな日々……。
うつくしさは日々増して。
元からゾクリとする愛くるしささえいや増している。
どこか禁欲的な感じすらするのに、到底明るい日常にはもう帰れない予感を孕ませる。
自分でも鼻白む。
病んだ警告だ。
こんな危険きわまりないものをどうして自分は手許に置いてしまったんだろう。
重度の貧血を患っているような、それでいて健康な血の気のないあの大きな目でじっと見つめられ、桃色の睫毛はばたく目尻に不器用な甘えが混ざるわずかな瞬間ですら───こんなにいとおしい。
そのぷっくりとした桜色の唇から紡ぎだされる言葉に耳を傾けていたりしたら、どんな無茶な願いでも聞き入れてやりたくなってくる。叶えてやりたくなる。
それこそ、病気のわが子に全愛情を傾ける親のように…。


嗚呼、だれでもこんなおかしな気分、説明できないようなうろたえた気分になることはあるんだろうか。
そのまなざしを遮るように、クシャリと置いた頭の上の手をかきまぜて、吐いたタメ息に慄えが混ざった。


「……一個だけだぞ?」


手に持った赤い箱をうれしそうに買い物カゴに入れるちいさな手。


また一日、これでもかと甘やかす日々。








fin



more
09/09 20:10
[銀魂]




・・・・


-エムブロ-