死垂る紫の蜜房の下で







普段のやんちゃぶりや、馬鹿で幼稚な言動のせいでおおいに隠されているが。
黙っていれば間違いなく大人をたじろがせるような妙な毛色をもつ仔供なのだ。
美醜の観点からいえばおおよそ人間離れした容貌のせいだといえる。もともとの造りが違うのだ。質が、違う。
しっとりとした純白の花弁を思わせる魔の肌は、冷たく無機質にも感じるが、シミひとつない極上の光沢とやわらかい質感をあたえている。
その純白の中に、これ以上なく端整に配置された、異様に彩度の高い大きな青い瞳と、すっきり通った可憐な鼻筋、みずみずしい薄桃色の赤子のような唇──。薄紅色の髪は天鵞絨のような猫族の気品さえある。
これだけ色が白いと他の色が綺麗に映えた。
とくに独特の青い瞳は、傘の影の中にあっても、瞬く星のように光を宿している。
むしろ影の中にあってなお、神楽のそれは、ぬめるように光った。
まっすぐに揺るぎない光。
それでいてどこかなまめかしい。
ぞくりとするような異端の中毒性がある。
しかも据えるようにしたその目には、一種の挑むような濃いもの、猛禽のような、鈍い光があった。鳥の目にしては重い、だがこめかみの辺りがどこか青じんでいる。銀時自身、出逢ったときに見たあの目だ。あの、自分の中のぶっとい芯を鷲掴みにされた目──。荒々しいまでの青。


申し分のない愛らしさと冷ややかな美しさは、どこか余計に凄みを感じさせるのかもしれない。
少女という、永遠ではない限られた時間と、その中でついた傷や苦しみが、より美しさに拍車をかけるのか。
ひだまりのなか、ぽつんと影のように立っている神楽を見るとき、あるいは薄暗い部屋のなかにいる神楽を見るとき、銀時はいつもだから少しの間だけ途方もない気分にさせられる。
それは理想的な愛情とはいいがたい。
ときに頭を抱えたくなる程の愛おしさを感じる。
不遜で不逞な、悪夢のようないじらしい幸福だ。背徳の匂いだ。


それらの、多分、銀時が生涯味わわずには終えることのできない、蜜めいたもの。
甘い罠のようなものへの彼の愛玩が、銀時の神楽を見る目のなかにも現れている。
それは紅い和燈の光の中にある妖しい世界を目にしながらも、ギリギリで盗み見るだけにとどめる、惑溺の男の目でもあった。


神楽の青い鮮やかさが増せば増すほど、銀時の暗紅色の視界は昏く狭まってゆく。





死垂る紫の密房の下で











fin
十四歳の女に本気になるということ



09/16 22:57
[銀魂]




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