「さあみんな!待ちに待ったゴールデン・ウィークに来週から突入よっ」
「…それがどうした。がっこ休みなんだから、団活も休みだろう?」
「ふ、甘いわね、キョン。長期な休みだからこそSOS団にとって有意義に過ごすべきだわ」
「有意義かどうかはわからんが、お前がたくらんでいることは何だ」
「ゴールデン・ウィークには、徳川の埋蔵金を探しに行きます!」
「意味わかんねぇぇぇ」
「ゴールデン・ウィーク…つまり黄金の週間ですか」
「さすが、副団長!そこらのヒラとは違うわね」
「埋蔵金ですかぁ…ちょっとロマンがありますねぇ」
「いやいや朝比奈さん。そこはうっとりするところじゃないですから」
「付近のだるま弁当は美味との情報」
「へえ。そうなんですか」
「長門も無駄な情報を提供しないよーに。そもそもここは関西。件の場所は関東だろう?よもや電車で行くとしても距離的に無理だろうムリムリムリ…」
「ムリムリ言われてますが、涼宮さん…どうしますか?」
「まぁ、確かに交通費が高くつくわよね。じゃあまあ別の企画にしましょ。…何か金に因んだことを提案してちょうだい」
「何だよ。金に因んだことって」
「それを考えるのが団員の役目でしょ」
「あのなあ」
「でも金って言われるとどうしても、塊や延べ棒とか想像しちゃいますよね〜」
「ふむ、そうですね。いっそ宝探しとか…けど、それはバレンタインに涼宮さんが企画しましたしね。金に因んだ遊ぶネタ…なかなか難しいですね」
「………………ポケモソ」
「長門さん、今、何と?」
「ポケモソなら、ゴールドがある」
「成る程。長門さん…らしい選択ですかね」
「確かに長門らしいと言えば長門らしいが…どうだ?ハルヒ、長門の提案は」
「いいわよ。久しぶりにポケモソ対決ってのも面白そうだし」
「…とは言っても、本体にソフトはどうすんだ?今ここには長門のくらいしかないだろう」
「コンピ研になら人数分ある。今なら彼らは不在」
「…だそうです」
「あー…」
「決まりね!」
と言うわけで、ゴールデンウィークはポケモソプレイになったわけだが、思っていたより楽しめたとは言っておこう。
QB・ω・「僕と契約して魔法少女になってよ」
ハルヒ「魔法少女?じゃ、変身できるのね?衣装チェンジが派手なら…まぁ、考えてあげなくもないわね」
QB「本当?…なら望みを…」
通りすがりのキョン「ちょーっっと、待ったー!!」
QB&ハルヒ「!?」
キョン「魔法少女だと?!いかんいかん!」
ハルヒ「何よ、キョン。いきなり出てきて。あたしが魔法少女になればSOS団のいいアピールになるじゃない。どうして反対するのよ!」
キョン「魔法少女と言えば変身だ」
ハルヒ「そうよ。お約束でしょ」
キョン「いくらキラキラっとしたりとか、ふわっとさせてみたりとか花びらが散ったりしてみても、一瞬……まっぱになるんだぜ、ハルヒ」
ハルヒ「あ」
キョン「そんなの、俺が賛成すると思うのか?」
ハルヒ「……ば…バカ」
QB・ω・「………帰ろ」
「局長、ネクタイが曲がっております」
「あ、そう?」
「はい。お鏡をご覧になられた方がよいかと」
「うーん。それも面倒くさいや。トモエちゃん、直してくれない?」
「私が…ですか?」
「そ、元上司命令」
「……わかりました」
巴は巌従に向き合うと、少し背を伸ばした。
女性にしては巴の身長は高い方であるが、それよりも更に巌従の背は上にある。
「失礼します」
そう言いながら、巴は巌従のネクタイに手を沿えてから、軽く引いた。
「どう?…直った」
「……すみません。あまり変わらないようです」
「トモエちゃん、やっぱり不器用なんだね」
いつもの屈託ない笑顔…もしくは人を喰ったような笑顔で巌従は巴に言った台詞は、わずかではあるが巴の心を突き刺した。
「…やっぱり。ですか」
そうさとられないように無表情を装って巴は答えた。
「あ、傷ついちゃったかな?ま、事実は事実だしね。トモエちゃん見てればわかることだからね」
無表情を装った意味もなく、あっさりと巌従は巴にとどめを刺した。
「……局長、私にどうしろとおっしゃるのですか?毎日、ネクタイを直す練習をしろとでも?」
「それも、面白そうだけどね。ま、ね、それよかさ、思ったんだけど、」
「何ですか?」
「僕に、お弁当作ってこない?」
「…それならさらに、私…苦手ですけど」
「うんうんわかるわかる。けど気にしない気にしない。大事なのは過程だから」
「先程から局長が私におっしゃりたいことが全くわからないのですが」
「……トモエちゃん、不器用な自分、こんぷれっくすでしょ?」
「………」
「料理も…まあ、ね。キミが作るものはね、想像できるんだけどさぁ、」
「無謀さは勇気とは違いますよ。局長」
「うん。無謀だとは思うけどね、だからボクが一番最初になってあげるよ」
「何の最初ですか?」
「トモエちゃんの手料理を美味しいと言ってあげるヒトの、ね」
…。
何て無茶苦茶なことを言う相手なのだろうと思いながらも、お弁当箱にはどんなのにしようかなどということが同時に浮かんだ自分に巴は、苦笑いをした。
恐らく、今日はスーパーに寄って帰ることになるだろう。
半年ぶり、に。
「なあ、古泉」
「はい」
「やっぱり、ガキの時って、かめはめ*波やったよな?」
「確かにやりましたね」
「…何だか脇に手を沿えると無意識にやりたくなるアレは何なんだろうな」
「男の心にはいつでも小二男子が住んでいるものですよ」
「そういうものなのか」
「ちなみに僕がたまにやるのは元*気玉です」
「わりぃ、何かそれ俺の胸が痛ぇ」
in閉鎖空間
地球のみんな
オラにちょっとだけ力をわけてくれー!
「また古泉、元気*玉やってる」
「ふふふ。男はいつでも胸に小二男子がいるものですぞ。私も若い頃はケンシロウになりきったものです」
「新川さん。何かキモいわよ」
「こんばんは」と、いれようか、はたまた無題かそれともReで返すか…結局悩んで「こんばんは」をタイトルに入力する。
けど、それから肝心の本文が思い付かない。「流石、先輩」などと入れるのもわざとらしいし、「あのケースはどんな判決でしたっけ」などと質問するのも、明日、職場で会えるわけだから聞くのも妙な気がする。「コーヒーおいしかったです」も夜更けに送る内容でもないんじゃ……。
「なんて考えてるうちに携帯の電池が切れるってワケ?」
「……そーなんですよ。たかがメールを送ろうとするだけなのに。ほーづき先輩。あたし、どーしちゃったんですかね?」
飲むとすぐ顔に出る質なので、千尋は真っ赤な顔をしながらグイとビールを煽る。
「…どーって、それはどうにもアレじゃないのかしら」
対する巴は、顔色こそ変わらないが、2〜3杯以上、千尋よりもジョッキを空けている。
「アレって…」
「言うのも野暮でしょう。自覚症状あるんじゃない」
「自覚症状…」
「熱、めまい、動悸」
「……はあ」
更に千尋はジョッキを掲げ、半分以上残っていたビールを飲み干した。「おかわり」と言いかけたところを、やんわりと「いったんウーロン茶になさい」と巴にたしなめられる。
「…良いじゃないの。満喫したら?」
「満喫って」
「恋よ。恋」
「………………ああああ」
「何でよ。彼、しっかりしてるじゃない。学生時代に貴女が付き合ってた『オレ、チヒロちゃんがいなきゃ生きていけないよ!』なんて言っておきながら三股かけてたカレや、テスト前なのに夜中に『お前のために歌を作ったんだ…』とか言ってきたカレよりは全然いいんじゃない?」
「ほーづき先輩、古傷抉りすぎです」
「…まあ、ダメ男好きな貴女が始めて惚れたまっとうな男性…でしょ。だから戸惑ってるのかしら?」
「そう!まっとうなんですよ。まっとうすぎてあたしがちょっと引いちゃう」
「貴女も屈折してるわね」
「だって、料理までできちゃうんですよ?昨日、おいしそうなお弁当持ってきてたから『やっぱり彼女いるわよね』とか思ったら『俺作、男の美学弁当だぜ』とか言って……」
「……千尋」
「何ですか?先輩」
「口からゲソ出てる」
「……あ」
何だかんだで、こんなに取り乱す後輩を眺めながら、巴はちょっぴり羨ましくも思えた。これからまかれるクダにまかれあきたら「それでも、縁あるんじゃないかしら?」くらいは言ってあげよう。と、ゲソに手を伸ばしながら巴は思った。