外は土砂降りの雨だと言うのに
我が家のお犬さまが逃げ出してしまいました。

しばらく雨が続いていたから、散歩もながくできなくて、きっとモヤモヤが溜まっていたのでしょう。
ごはんをあげようと、お兄ちゃんが小屋を開けた瞬間に

ダッシュ!

「うそ!」
「どうしたの?」
「ハコが逃げたっ」
「えっ!」
「コトは?」
「コトはいる……」

うちには犬が2匹います。
白いハコと
茶色なコト。

コトは小屋の中で、ハコの脱走を心配そうに見つめていました。

ハコはやんちゃなお兄ちゃんっ子
お兄ちゃんと遊んでいるつもりなのか、お迎えに来たお兄ちゃんに近づいてはギリギリで避けて、また近づく……の繰返し。

おやつ作戦を試みましたが、水溜まりに足を突っ込む方が楽しい様子でした。

私も、ふたりのお兄ちゃんもお手上げです。

「仕方ない、奥の手を使おう」
「おぉ、使っちゃいますか」
「あれしかないね」

奥の手、とは。

みんなで、遠くに走っていってしまったハコに叫びます。

「ハコちゃん、バイバーイ」
「帰るね!」
「じゃあねーハコ!」

それから、3人で家に帰る。それだけ。
構われたがりなハコは、そうすると一気に不安になるらしく、慌てて私たちのところへ走ってきます。
足元をうろうろしますが、無視、無視、無視……

「ハコ、お家は?」

そう聞けば、ハコは小屋に向かってダッシュ!
きちんと収まってくれました。


帰ってきたハコは、ぐっしょり濡れていて、なんだか野良犬みたいな出で立ちになってしまいました。
鼻筋の毛が薄いから、うっすら地肌の黒が目立って、なんだか……

「なんかメイク濃いね、ハコ」
「アイラインも濃いね」

ハコは知らん顔でした。