零優零。
せなかとみみとのこどう。
**110115


その背中は
大きくて。

後ろ姿を見つける度に触れたくなる程に。
いつも追ってしまう。






せなかとみみとのこどう。












心地好い柔らかな陽が射す昼下がり。
大きな欠伸を零しながらリビングに入ると
ソファーに座る零の後頭部が目に入った。
真ん中に陣取り、頭を下に擡げているのは何かを見ているのか。
優姫はソファーに近付くと零がいる右側の背もたれに身を寄せ上半身を預けた。


『零、おはよー。早いねー』

『・・・全然早くねぇけどな』


零は時計を見ながら右から顔を覗かせる優姫へ溜息を返す。
針が指す時間は既に昼を廻っていて、
そろそろ昼飯でも、と考えていたからだ。


『お前、今まで寝てたのか』

『えへ。寝る子は育つ的な?』


えへへと笑う優姫に零は再度の溜息を零す。


『育ってる様には見えないけどな』

『ちょっと!どういう意味ー』


優姫は零の肩をバシリと叩いた。
零は「痛ぇな」と零すと見ていた本をパタンと閉じ、上半身を傾けて前のテーブルへと本を置いた。

その動作を見ていた優姫の目の前には、背もたれを離れた零の背中が広がって
ゆっくりと元の場所に戻ってくる。
零の頭が元居た横に位置すると、無意識にその横顔に優姫の視線が固定されていた。


『・・・何だよ?』


じっと見られていた零は訝しげに優姫に顔を向ける。
背もたれに上半身を寄せたままでいた優姫は、向けられた零の顔を暫く無言で見つめた。
言葉のない優姫に、更に零の顔に訝しむ眉間の皺が増えた。

優姫は前のソファに身体を移動させると
真ん中に座っていた零をぐいぐいと端に寄せ
どっかりと横に腰を下ろした。


『お前なぁ・・・おわっ?!』


そのまま有無を言わさず零に背中を向けさせ、
優姫はその背中にぴとりと自分の背中を重ね合わせた。
ソファの上で背中合わせに座る現状に、零は理解出来ずに背筋を少し丸めた。


『一体、何なんだ・・・』

『・・・うん、零の背中広いなぁ、大きいなぁって。』


優姫は言いながら首を伸ばし、背中をすりすりと零に寄せる。
丸くした零の半身は更に身を縮ませた様だった。

はぁ、と吐いた溜息が背中越しに、震える様に優姫へと伝わってくる。


『当たり前だ。
ちびでちっさいお前と比べんな』


言うと零の背中がぐぃと伸ばされ、優姫の背中に零の体重が少しだけ預けられた。


『むー。
ちびでちっさいって同じ事2回も言わないでよー』

『本当の事だろ』

『気にしてるのにー』


話しながら少し笑う優姫の呼吸も言葉も振動して伝わり、
お互いに共有しているようで
零は背中をびきりと強張らせ、言葉を飲み込み無言になる。

それに合わせる様に優姫も言葉を発する事なく、背中の温度に包まれ目を閉じた。


(広くて、とても優しいな)


零と重なる温度が心地好くてずっとこのままでいたいと思ってしまう。


(ずっと触れていたいなぁ)


動かなくなった優姫に対して零は小さな溜息を吐いて顔を少し後ろに向けた。


『おい、優姫・・』


と同時に零の背中から優姫の体温がなくなり重みが離れていった。
良くわからない背中合わせが終わったのかと、吐息を吐いた零の顔は一旦前に戻る。
背筋を伸ばしパキパキと音を鳴らせた。

そんな零の背中をまじまじと見つめていた優姫は、おもむろに

" ぜ ろ "

と伸ばされた背中の真ん中に指でなぞる。

すると、腰辺りをなぞった瞬間に零の背筋がびくびくと波を立てるように震えて のけ反った。


『ぅうわっ!』

『えっ!』


自分の反応と思わず出た声に、零は目を見開き弾ける様に後ろを振り返った。
あまりの事に優姫は目をぱちくりして零の顔を見つめる。


『お、お前何してっ』

『な、何って・・あの、背中に文字書いてみたりして・・・
ホラ、文字当て、みたいな?』


零の思わぬ反応に、ビックリして宙に浮かんだままの人差し指をくねりと曲げた。


『っ!』


顔をしかめながら零は背中に手を遣った。
目線が左右に空を泳ぐ。
優姫はそんな零を嬉しそうに見つめ近付くと背中に回ったその腕を掴んだ。


『もしかして・・零ってば背中弱かったりして』

『よ、 弱くない!
驚いただけだ!!』

『ふぅーん・・
そうなんだ?驚いたんだ?』


優姫の顔はニヤニヤと零に向けられる。
零は背を隠す様に背もたれに移動させると顔を背けた。


『お前・・ろくな事しないな・・』


はぁ。と溜息を吐く零の様子を見つつ、優姫は隠した背中を隙間から再度ツンツンと指で点いてみせた。
先程の様な反応はない。


(あれ。やっぱり驚いただけなのかー)


暫く突いているとおとなしくしていた零の我慢の限界を迎えたようで。

『優姫・・いい加減に・・・』


そう呆れた様子で零が顔を向けるのと、
優姫が横から、つーーと流れる様に指を走らせるのとはほぼ同時で。

「びくびくっ」と背中が波打つ状態の零の顔を優姫はマジマジと見てしまう事になった。
バチリと目が合った零の頬には朱が走り、弾ける様に口を手の甲で覆う。


『お前っ!それやめろッ』

『やっぱり!背中弱いんじゃない零!』


にやにやと笑みを浮かべ喜ぶ優姫に、零は益々不機嫌バロメータのシワを寄せた。
大きな溜息を吐いて身体の力を抜き、じろりと優姫に目線を投げる。


『いい加減にしろよ・・・』

『零が意地悪な事言うからだよ!』

『はぁ、だからホントの事・・・
 何か疲れた。』


零はそのままどっかりとソファにもたれ掛かり、首を背もたれに乗せて空を仰いだ。


『えへ。私といると退屈しないでしょ』


そう言うと優姫はニコニコと笑みを向け零の横に身を寄せた。
懲りずに腕やら首やら横腹をツンツンと指で突くのを続けている。


『他に零の弱い所は無いかな〜?』

『・・・おい』


零はピクリと微かに眉を強張らせた。
止めない優姫に対し零は身体を起こし、行動を封じる様に優姫の手首を掴む。
変わらず楽しそうに零を見る優姫は、手首を掴まれながらも、にまにまと笑顔を向けてくる。


『何だか零が一気に可愛く思えてきちゃ・・ひゃあ!!』


腕を掴まれた優姫はそのまま引き寄せられ、耳元に息を吹き掛けられた。
零の唇が微かに当たり、熱を持った吐息に、優姫は奇声を上げて耳を押さえる。


『な、な、なッ・・』


顔を赤らめ口をぱくぱくさせていると
したり顔でにやりと口角を上げた零の顔が優姫の目の前に広がった。


『お前は、耳が弱いよな?』

『ぜ、零ッ!なにするのッ!』

『なんだよ。優姫から吹っ掛けてきたんだろ』

『そ、そうだけど!
な、何かそれとは違うって言うか・・』


(背中と耳じゃ何か違うでしょー!)


優姫は赤らめながら眉を寄せて零を睨む。


(し、しかも、くちっ、唇当たって・・)


耳に残る零の感触に身体が火照る。
しかし、当の本人はあまり気にしていない様だった。


『もうやるなよ?』

『ぅう』


ビシリと睨みつける零の瞳は光を反射し優姫に向けられた。
先程まで頬を紅潮させていた零の様子は跡形もなく。


(何だか・・悔しい!)

ソファから立ち上がると、零はキッチンへと向かった。
そしてチラリと振り返り、指を指して優姫へ向けた。


『言っておくが、俺は背中が弱い訳じゃないからな』


そう言い放ち、「腹減った」と零しながら冷蔵庫を開けて物色し始める。
そんな後ろ姿を見ながら優姫は小さな溜息を漏らした。


(バレバレなんだから!)


心の中で呟きながらも
零からの仕返しを考えると攻撃出来なくなってしまった。
「ぅう」とソファの上で膝を抱いて唸り声を上げる。


『優姫、焼きそばで良いなら作るぞ』


キッチンからそんな声が掛かり、優姫は顔を上げた。
テキパキと動く零をリビングから見遣ると
零の背中が見える。


やはりその背中は大きくて。

優姫はソファから静かに離れ、後ろ姿を追ってキッチンへ向かった。

触れたくなるのは仕方ないんだと思う。


『零の焼きそば、・・・すき』

『は?』


優姫はキッチンに立つ零の背中に再度背を重ねた。

感じる零の温もりが愛おしいから。
仕方がないんだと思う。


『おい、邪魔だ』

『良いでしょー。仕方ないんだもん』

『はぁ?何が』

『内緒ー』


優姫はくすくすと笑いながら離れようとはせず、身体を横に向け耳を当てた。
ゆっくりと波打つ心音が伝わってくる。
すりすりと身体を寄せて重なる様に。

零は「意味わかんねぇ」と零しながらもそのままの状態で料理を続けた。





せなかとみみとのこどう。





二人離れずに過ごすのどかな休日が
いつまでも続きますように。




















20101113−−−−−−−−》》
1周年!ありがとうございます!!
\(*´∀`*)/

実はね
ホントは零優まつりさんのお題見て


何それキャワ!
萌え!



と思って考え始めたやつだったのこれ。


でも 何か・・・お題とちがくね?
てなってほったらかしにしてたんだけど

1周年で妄想再開してみた。


一万駄文離れていつもの何の毒気もないほのぼのぼのていすとでございます・・
(ごめんなさい)
(ほのぼの好きなんだ よ)
(え。ほのぼのだよね??)


やわらかな空気の中でしやわせな時間を
零たんへ!フォーユー!


キャワ!
と思った零優まつりさんのお題はどなたか神書きさまが書いて下さらんだろうか
どなたか選んで下さらんだろうか・・・
(´;ω;`)キャワイイの読みたい


因みにこれ・・乙梨の実話だったりするよ
背中弱いよ(笑)
ビクビクってなるよ(笑)

そんな訳で
ホントにこんなサイトを覗いて下さる皆様
ありがとうありがとうありがとうございます!

(1周年記念であぷしていたGDGDでございます!)








  


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