スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

愛なんて言葉(ベル)



「昨日さ、お前の夢、見たんだけど」



ソファにふんぞり返って座るベルが、
自慢のナイフを愛でながら、
興味なさげに呟いた。


隣りに座る私はと言えば、
手持ち無沙汰に何をするわけでもなく、
退屈そうな金髪をただ眺めるだけ。



「…そう…どんな夢?」

「さぁ、忘れちった」

「なにそれ?じゃあ私の夢だったかどうかも本当はわかんないんじゃない?」


ハハッと笑って言うと、
ムッと唇を尖らせた君が手にしてたナイフは向こう側の壁に掛けられてたダーツの的へと吸い込まれていった。

もちろん、
突き刺さったのは言うまでもなくど真ん中。



「ちげーよ、お前が出てきたのはぜってー確実、何してたか思い出せねぇだけ」

「ふーん…」


まぁ別に夢の話なんてどうでもいいけど。

フカフカのソファの肘掛けに頬杖をつくと、
ふわりと体が沈む。

とっさに襲い来る睡魔が愛おしい。

特にすることもなし、
退屈だし、
寝ちゃおうかなと、
眼前に広がる世界を瞼で閉ざす。


「おい」
「……………」

「お前オレの話聞いてた?」

「……何?まだなんかあるの?」


面倒くささに溜め息混じりで応えると、

バチンっ

と細い指先が額に向かって弾かれたのが目を瞑っていても分かった。


「痛っったっ!!ちょ、なんなのもう!!」

「王子の話聞かねーからそういう目にあうんだっつの、
ナイフじゃなかっただけありがたく思えよ」


三日月みたいに笑う口が私を向いてる。

キッと睨み返せば、
ズイと接近してくる金髪は、
ため息が出るほど綺麗。






「…な……なに…?」












「なぁ、夢に見るくらい王子に愛されてるっつってんのに、
なんで気付かないわけ?」














お前って本当馬鹿じゃん、









そう付け足しながらぶつけられた唇に、
呼吸も慌てる言葉も奪われて、
世界中の時間が止まってしまったみたいに静まり返った部屋の中、
私の心臓だけが一人歩きしてるみたいに早鳴ってた。














人を殺すことしか興味ないと思ってた君も、

愛なんて言葉、

知っていたんだね。













「…いつもこんなそばにいたいって思え
るくらい愛されてるのに、
なんでベルは私の気持ちに気付かないのさ……」


鈍感なのはお互い様、


僅かに離れた唇の隙間でそうぼやくと、

また三日月みたいな君の唇がしししと笑って、






「んじゃ、見してよ、お前のその愛ってやつ」






呟きながら、
再び押し付けられた唇。

ソファーに沈んだ背中に回された細い腕が温かくて、

揺れる金髪から覗く瞳があまりにも綺麗で。




夕日が沈んで1日の終わりを告げた頃、




君との終わりの来ない始まりを感じた。






END



(夢で見たお前も、
馬鹿みたいにオレが好きだって叫んでた)






前の記事へ 次の記事へ