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先日テレビで白狼が勤めていた工場が特集されていた。
ふと、今何をしているのだろうと思った。
理解してくれる様な相手と出会えたのだろうか。飢えにも似たあの狂気は癒されたのだろうか。結婚したのだろうか。子供は出来ただろうか。幸せなんだろうか。
幸せになって欲しいと言った僕にお前に俺の幸せが分かるのかと声を荒げた姿が懐かしい。最後に会ったのは5年前か6年前か。去年は誕生日にメールを送らなかった。もう送る事もない。僕の中のけじめだった。白狼がどんな人生を歩んでいるかは知らないが、僕は僕の人生を歩んでいる。ロイと出会って、もう白狼の事を想い続けるのは辞めようと。
あんなに離れて居てもお互いの事が手に取る様に分かって、いつでも白狼の気配を拾えて居たのに、今では全く感じなくなった。もう糸が切れてしまったのだと思った。もうこの糸が繋がる事はない。何かの拍子に、なんて都合のいい事も起こらない。一寸先の事が見えなくても、これだけは間違なく言える。
僕が白狼を必要としなくなったのか、白狼が僕を必要としなくなったのかは分からない。1つ言えるのは、もう半身ではなくなったという事。お互い別なものになってしまったという事。
白狼と過ごした過去は変わりない。どんなに幸せだった時も傷付け合った時も。ただ、時々、古びた置物の様に、手に取って、眺めるくらい、良いだろう。
気紛れで自由気ままな、その生き方が僕は好きだった。
人生に絶望して死に場所を求めていた白狼だけれど、誰よりも生きたがっていた事を知っている。だから、まだこの世界に居るのだろう。
僕も、色々あったけれど、まだ生きているよ。
それが唯一、白狼との繋がり。白狼が生かしてくれた命を全うする事だけが恩返し。