一言も話さなかったのは、博士の依頼主でもある現代のテンプル騎士団に怯えたからではない。
自分の人生を諦めていたからでもない。
では、何故か?
その答えは彼の力が語っていた。
最後の闘いを終え、目を覚ましたデズモンドは今まで見えなかった物が見えるようになっていたのだ。
おそらく暗号か何かだろうが、誰がなんのために残したのか?
何故、いきなりアルタイルにあったような能力が身についたのか?
この記号や言葉は何を意味しているのか?
デズモンド・マイルズのアルタイルとしての闘いは終わった。
が、彼自身の闘いは今、始まったのだ。
『あなたたちの闘いは1000年間続いているのよ‥』
いつしかのルーシーの言葉が響いて来た。
−ASSASIN'S CREED END−
声は現代から聞こえる声だった。
つまり、アニムスのある研究室で響いている声だったのだ。
声の主はウォーレン。
そう、あの地図に表示されてた光点こそが彼等、現代のテンプル騎士団が探している秘宝の在りかだったのだ。
デズモンドがゆっくりと起き上がるとウォーレンは、曇りガラスの向こう側にいる3人組と話しをしていた。
どうやら彼等が依頼主らしい。
つまり、現代のテンプル騎士団だ。
彼等と博士は用済みとなったデズモンドを消す方向で話しを続けていたが、そこにわって入ったのはルーシーだった。
『待ってください。場所がわかったとしても、罠がないとは言い切れません。いずれ彼の記憶が再び必要となるはずです!!』
ルーシーの言葉は確かに一理ある。
それを納得したのか、3人組はデズモンドをまだ生かしておく事を許可。
そして姿を消した。
博士は納得行ってないようだったが依頼主が言うなら仕方ないのだろう。
ルーシーを連れ、研究室を後にした。
デズモンドは、一言も話さなかった。
何故か?
長い闘いだったが、決着は一瞬だった。
攻撃を交わしたアルタイルが奴を突き飛ばし、バランスを崩したところにアサシンブレードで留め。
遂にこの闘いに終わりがやって来たのだ。
アル・ムアリムの手から転げ落ちた秘宝を破壊すれば全てが終わる。
秘宝に近付くアルタイルに死に際のアル・ムアリムが言った。
『貴様にそれが破壊できるか?』
そう、誘惑などと言うものがあるとは思えない。
が、しかし現に秘宝を破壊するために振り上げた拳をおろせない自分がいた。
アルタイルは焦りを隠せないようだった。
その時、いきなり秘宝が輝きだし、目の前に地球儀のような世界地図が現れた。
光りによって映し出されたこの地図の中にはいくつかの光点がある。
一体、その光りが何を意味しているのか?
駆け付けたマルク達と共にその地図を見上げるアルタイル。
もう何がなんだか彼にはわからない。
‥
『これだ!!遂にやった!!これだぞ!!』
なんとアル・ムアリムが9人に分身したのだった。
恐らくは秘宝の力だろうが、こんな力まで持っているのか‥
どれが本物か全く見分けがつかない。
とにかく攻撃を交わし、カウンター。
これを繰り返して少しずつ数を減らしていった。
すると5人目くらいにカウンターを当てた時、分身が一気に消え本物が1人残った。
どうやら今カウンターを当てたコイツが本物だったようだ。
ココまで来て気付いたが、多分Yボタンのイーグルアイを使えば一瞬で本物とか見分けが着いたんだろうけど、結果オーライだ。
すると奴は次に瞬間移動を始めた。
霧のようなモヤが立ち込める中で姿は追えなかったが、手に持つ秘宝が光っていてその光りを頼りにモヤの中にナイフを投げる。
するとアル・ムアリムが苦しむ声が聞こえた。
当たったようだ。
が、またすぐに姿を消した‥
しかし、秘宝の光りを追っては攻撃をし、追っては攻撃をし、これを繰り返したら遂に瞬間移動が出来なくなったのか、奴は剣を抜いた。
遂に本物の師弟対決が始まった。
城の前に群がる意識のない村人を掻き分け中に進む。
いつもの場所にアル・ムアリムはいなかった。
そしてアルタイルは中庭に出た。
すると突如、体が光りに包まれ自由を奪われた。
目の前に現れたのは秘宝を手にしたアル・ムアリムだった。
奴はこの作戦の全てを話しだし、アルタイルをも取り込もうとしていた事を明かした。
が、秘宝を目にしても誘惑に負けず当初の目的を貫いたアルタイルを見て、使えるところまで使い最後に消そうとした、と。
アル・ムアリムは完全に秘宝に心を食われていた。
こんな男がこの秘宝の力を得たらどうなるか‥
そんな事、考えたくもなかった。
今はコイツを止めなくてはならない。
体の自由が解けた時、アルタイルの目の前に現れたのは幻か現実か判断の着かない光景だった。