夕暮れの淡いオレンジの光が、室内を優しく灯す。
日中の生徒達の元気な声をあたたかく包んだ室内。
今は、1人の歌姫の安らかな眠りを包んでいた。


アルトは、近づいても起きないシェリルに無用心だ。と、思いながらも安らかな眠りを妨げない様にそっと見守った。

銀河のアイドル。彼女の日々が多忙である事を彼女のマネージャーであるグレイスから直接聞いている分、学園内の誰より理解しているつもりだ。

何で、いつもいつもコイツは無理して学園に来てるんだ?
仕事と勉強の両立。言葉にすれば簡単だが、彼女の立場から考えるととんでもなく大変な話だ。

それを
こいつは

あたしは、シェリル・ノームよ!

その呪文の言葉で、やってのけている。
しかも完璧に…だ。

こいつが疲れた顔で寝てる姿を誰が想像するだろう?皆の前でのシェリルは元気いっぱいだ。


『アルト!10分たったら起こしなさい』

姫はそう命令して、眠りについた。


腕時計をちらりと見れば間もなくタイムアップ。

起こさないとうるさいだろうしな…

姫を目覚めさせるのは、神話の昔から王子様のキスと決まっている。


「(°д°;;)なっ…俺は何を考えて!!!」

恥ずかしさから叫び出しそうになる己の口を両手でふさぐ。
幸いシェリルはまた、甘い夢の中。

ホッ

そっと息をはきながらも思わず瞳が捕らえるのはシェリルの

柔らかそうなピンクの唇。

ドキドキ
ドキドキ
心臓が大合奏を始める。

「……ト」

寝息と共に吐き出される己の名前。
少し開いた唇から除くのは赤い舌。

ヤバい
反則だよ
エロいよお前

引き寄せられる様に縮まる二人の距離。

気が付いた時には、シェリルの青い瞳と視線が交錯していた。
「……どう…して?」離れた唇から苦しげにシェリルが言葉を紡ぐ。

「…知るかよ」

そんな事、俺が聞きてえ。

ほぼ八つ当たりの気持ちで、もう一度シェリルの唇を奪う。
今度は深く。

冗談では済まされない…キス。

シェリルの唇の柔らかさに…甘い香りに下肢が疼く。

俺はその他大勢の男とは違う。違ったハズなのに!!!

思い込みはキス1つで消し飛んだ。