穏やかな昼下がり。
空腹を満たしうとうととするアルトを叩き起こして。シェリルは1人、話しに花を咲かせる。

「あ〜」
とか
「う〜」

と。反応の悪いアルトの頬を華奢な指先で思い切りひねる。力の無い女の指でも肉付きのない頬をひねられるのは痛い。


綺麗な瞳を涙で濡らして、しれっと腕組みするシェリルをにらむ。「なにすんだ!」
「アルト姫。大きな瞳を涙で濡らしてどうしたんだ?」
「なっ…ミハエル」

このアホはこいつの前で何を言うか〜!

潤んだ瞳で睨んでも逆効果なのだが。アルトはそんな事は気が付きもしない。


「………アルト…姫………?」
シェリルがきょとんとした顔でアルトを見つめミハエルは、ニヤリと口角を上げ人の悪い笑みを張り付ける。


サラサラの長髪に女と見誤る美貌。長身のわりには華奢な体。
そして、何より。
脈々と受け継がれる伝統芸能の技と艶。
どんなにアルトが嫌悪して遠ざけようと。今の早乙女アルトを形成した全てが

「……姫だわね」

シェリルは笑うでなくただ納得した。

「なっ!シェリル!!!」

アルトとしては笑ってからかってくれた方が少しは救われる。


「…これは。銀河の妖精の前で失礼。君は銀河全ての姫君だね」

シェリルの手にキスでもしそうな勢いで華奢な手を掴み上げ。普通の女ならとろけそうな顔で微笑む。

「姫?あたしが?」

普通の女であったなら…なのだが。ミハエルは彼女がシェリル・ノームだと言う事をまだ理解していなかった。
「あたしは、アルトの女王様よ!」

形の良いバストをツンと貼って、堂々と言い切る。

「なんで俺限定?」
アルトは頭を抱えて机に倒れ込み。
ミハエルは一瞬呆けたが、アルトをからかうネタをまた発掘してニヤリと頷いた。

アルト=姫
シェリル=アルトの女王様

こうして、ミハエルの優秀な頭脳に下らない知識が増えて行く。