スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

台詞が男前

「私は空軍の仕事をしたまでです。まぁ、気にするなら貸しにしといてもいいですよ」とか、どんだけ軍曹なんだよっていう。
ネタを整理しつつ大筋が出来てきているのですが、谷川が少々軍曹すぎる気がしてきた。
シャイだからこういう物言いしかできないという設定なのですが、これではもはや本物のベテランじゃないですかー!
もうちょっと爽やかに拳をぶつけるハイタッチのシーンとかがあってもいいかもしれぬ。
佐久くんは無口なんで台詞が考えづらいです。「堕落してみるか?」(ニヤリ)くらいしか思い浮かばない。

なんか究極漣が再登場しそうです。

敗走の「ルール」



皆さん負け戦は好きですか?私は嫌いです。

敗北を目の前に戦うことなど人間にはそうそう出来ないのではないでしょうか。
密林の戦場で飢えと病に蝕まれながら敗走する日本兵を描いた「ルール」、じつは何度も読みました。
が、不覚にも初めて落涙。しかも新幹線のなかで。
立場が変われば本の読み方も変わりますが、初めてこの作品で泣きました。

主人公の「鳴神少尉」はマラリアを発病し、それ故に突撃の囮にされて部下を全滅させました。
彼を支える「姫山軍曹」は転戦を経験した百戦錬磨の下士官です。
敗走する中隊から彼らの班ははぐれてしまい、飢えと病、過酷なジャングル、ゲリラに苛まれながら逃げ延びます。
しかし、何よりも彼らを脅かしたのは軍隊から離反した遊兵でした。
彼らは究極の飢えにより、戦友の死肉を口にし、兵をも襲うようになっていたのです。
人間の形を失った人間の中で、鳴神と姫山は何とか若い部下を助けようと、更なる地獄へ足を踏み入れる・・・という粗筋。
壮絶なのはとにかく飢えです。補給のない軍隊の悲惨さ、凄絶さの描写が腹に効きます。
肉なんかないので、雑草、かたつむり、虫、ヒルを食いながら逃げ延びます。
その描写が延々と続く中で、「人肉を食べない」ということの難しさが否応なしに描かれるのです。
病や飢えで死んだ屍が道端に打ち捨てられ、とうに国は焼けている。
その中での「敵の手で死にたかった」という言葉はどれほど切ないでしょうか。
敗走するために生き続けなければならず、それでも最後まで守らなければならない尊厳のために死ぬ。
敗軍の兵とはこれほどまでに重い責を負っているのです。
細部を語ってしまうと衝撃が薄れるので敢えて書きませんが、最後の展開はその切実さに胸が苦しくなります。
終盤になると、台詞のひとつひとつの意味が心を揺さぶります。これほどまでに切実な戦争を、私は他に知りません。

負け戦で戦い続ける。その中に、人間の凄みや願いが光る。
戦争小説ではありますが、ミリタリー小説ではありません。なるべく無心で読んだ方が感情移入できます。
勝ち戦が大好きな方(私もですが)にこそお勧めする一冊。ページを捲る度に打撃を食らえます。
兵士のプライドってそんなに安い言葉じゃないんだなあと、目を擦りながら感じた一冊です。
prev next