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この部分だけ書いてて楽しかった

こないだ投下したネタ。ヌルい。後半エロなんで前半だけ。

中尉はバカだ。
彼女がバカだとは重々知っていたが、毎回そのバカさ加減にはビックリする。
慌てふためいて電話していると思えば、振り込め詐欺に騙されてキャッシュコーナーに行こうとしている。
この前はスケベで有名な隣の部隊の独身中佐に食事に誘われて、何も考えずにノコノコ連れ出されそうになっていた。
かと思えば、木に登った子猫を助けようとして木に登り、枝を折ってしこたま怒られていた。
とにかく中尉はバカなのだ。仕事は出来ないわけではないし、センスは悪くはないのに、常識のネジが5本ぐらい外れている。
そんなわけで、顔が悪いわけではないが中尉には男がいない。
ふわふわとした、ショートの外ハネの赤毛。少し面長な顔立ちは線が細く、ソバカスもあいまってどちらかといえば美少年のようだ。
何よりも、存外に長い睫毛に飾られたハシバミ色の瞳はいつでもキラキラと輝いている。
濃紺のフライト・スーツに包まれていても分かるのはすらりと伸びた長い四肢。
その分肉は少なく胸もわずかにあるくらいで、むっちり熟女が好きな私には箸にも棒にもかからない。
階級が上といえど、中尉は7歳も年下の小娘、しかも温室育ちなのだ。貧乏くじを引いた私が、影でいつも彼女の面倒を見ている。
振り込め詐欺も、嫁探しの中佐も、私がいなければあっさりと中尉は騙されていただろう。本当に世話の焼ける女だ。どうしようもない。

中尉の名前は、神立 多輝という。かんだつ・たきと読むらしい。周りからはタキちゃんと呼ばれている。
パイロット候補生を修了し、私の部隊に配属されて2年目の若手パイロットだ。
パイロット学生から上がったばかりの中尉など、下っ端にすぎない。私たちベテラン軍曹が、その右も左も分からない彼らを育て上げるのだ。
中尉が配属する前に、私が彼女の教育係にあたるとは聞いていた。まさか本当にこんなガキが来るとは予想外だったが。
私たちは一つの機体のクルーだ。私は後席で航空電子機器を操作している機上整備員だ。中尉は機長に絞られながら技術を学んでいる最中だ。
操縦センスは悪くはない。時々、急に上手くなって驚く時がある。中尉の感覚は動物的だ。
でも、まだまだ経験が足りない。判断も未熟だ。
クルーに一人前と認めなければ、ここでは操縦を任せてはもらえない。
あっけらかんと明るい中尉でも、時々落ち込んでいることがある。それを見せないように振舞ってはいるのだが、いつもバレバレだ。
フライト中、斜め後ろから見る操縦席の中尉が歯を食いしばっているのを見る。
中尉はバカだ。女なのだから、パイロットなんて辞めてしまえばいいのに。
私に機材のことを教わりながら、いつもありがとうございます、と頭を下げる中尉を見るたびにそう思う。
バカだからなのか、大概はいつも楽しそうだ。私のことを、取手(とりで)軍曹、とニコニコしながら呼ぶ。
中尉は私を信頼しきっている。そんなんだからすぐに騙されるのだ。
最近では、なぜかipadの修理の約束をさせられた。「取手軍曹、iPadのこと分かりますか?」の一言で、何時の間にか中尉の家に行くことになっていた。
聞けば、酔った勢いで買ったはいいが使えないらしい。中尉のことだから、多分OSの設定が必要なことを知らないだろう。修理以前だ。
今日は金曜日だから、今から中尉の家に行く。
でも、あのバカは約束を忘れたのか、どこにもいない。帰ってもいないようだった。
昼間のフライトから渋い顔をしていたから、上手くいかなかったことがよほど応えていたのだろう。
操縦中に機長の裏拳を食らったので、フライト後に額を冷やしてやっている最中も、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

結局皆が帰ったあとに中尉を見つけたのは、物置の隅だった。
日もとっぷりと暮れて、電気も点けない物置はほとんど暗闇に沈んでいた。
すすり泣く声がなければ、いくら夜目が効く私でも彼女を見つけられなかっただろう。
電気をつけると、山積みの壊れた机や、皮の破れたソファーの奥で、中尉は冷たい床に体育座りしていた。
ああ、やっぱりバカだなぁと私は思ってしまう。まるで失恋した中学生のガキだ。うっとおしい。
膝に額を押し付けて、シクシクと泣く中尉の赤毛だけが見える。それが、私をうんざりさせた。
「中尉、しっかりしてください。iPad、使えるようにするんでしょ」
私の声に反応して、中尉はわずかに顔を上げた。青ざめた顔に、頬の跡が残っている。
カカカ、と白い歯が震えてぶつかる音と、途切れ途切れの呼吸の音が響く。大きな瞳から落ちた涙の筋が、頬にいく筋も流れていた。
側に膝をつくと、中尉は顔を背けて掌で私を押し返した。
「ご、ごめん、なさい、でも、見、ないで、下さい」
声が滲んで、中尉は祈るように俯いた。中尉が泣いているのを見るのは初めてだった。
勿論、人知れず泣いたことはいく度もあっただろう。その位の苦労をしなければ一人前にはなれない。
でも、それを表に見せてはいけないのが士官という立場だった。だから。
「見、みられ、たら、ダメなんです・・・」
中尉は詫びるように言った。自分の身体を抱いて丸まり、物置の片隅で。
今更私に対して体裁を気にする中尉は、やっぱりバカだった。
「ダメです。許しません。ほら、さっさと顔洗って帰りますよ。他の人の迷惑も考えてください」
グズグズする中尉に付き合うつもりはなかった。いつまでも腐っていられても、戸締りが出来なくて困るのだ。私も中尉も、着替えてさえいない。
中尉の腕を掴むと、強引に引っ張る。振り払おうとする中尉に負ける私ではなかった。
彼女ははムキになって歯を剥き出しにしていたが、一々付き合っていられない。
「離して下さい!」
「怒るくらいなら立ってください」
中尉の腕は、やっぱり細かった。生地越しでも、骨ばった二の腕の感触が伝わる。筋肉は薄っすらとついているが、男の腕には遠く及ばない。
胸がグッと詰まる感じがして、それが焦りのような感情を呼び起こした。
何を同情しているのだろう。
これが男だったなら、放置できただろう。でもなぜか、そうは出来なかった。
「いい加減にしなさい、中尉」
私はなるべく冷たく言った。
びくんと肩を震わせて私を見た中尉が、一瞬握った手を緩めた。
彼女は言葉に詰まって、いつもキラキラしていた瞳が錆の色に染まる。
「・・・すみません」
中尉が小声で謝る。素直が数少ない取り柄だ。
仕方なく、ため息混じりに声をかけてやる。
「ほら」
「取手軍曹」
中尉がぎゅっと私の袖を握った。目の淵を腫らしている中尉は、束の間年相応の小娘に見えた。
「見捨てないでください」
そんな言葉は、中尉の口から聞きたくなかった。懇願している中尉は、子供のように私を放さない。
中尉はバカだ。中尉が一人前になる後押しをするのが教育係の私の役目だ。それを途中で投げ出すはずがない。
それに、この程度の失敗は見慣れたものだ。機長の裏拳の手当てをするのも数人目である。
「中尉」
仕方なく抱きすくめると、ふわりとわずかに残った制汗剤の香りが立ち上った。首筋に這う良い香りにクラクラしそうになる。
繰り返すが私は熟女好きである。こんなジャリのマッチ棒は好みではない。
以下略
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